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2004年02月03日

IPOバブルはなぜ起こるのか ベンチャー中小企業の資金調達とグリーンシート

金融に関する情報源として、毎回熟読してしまうJMM [Japan Mail Media] 。村上龍編集長の疑問に、金融業界の第一線で活躍されている方々が回答を寄稿するメール新聞で、日経新聞やビジネス誌よりもトピック毎には掘り下げられた解説が読めます。最新号で、株式に関して疑問に思っていたことが非常によく解説されていたのでメモ。

最新号はディー・ブレイン証券の出縄良人さんへのインタビュー。「なぜ株式投資はギャンブルのような印象を受けてしまいがちなのか」、「銀行などの間接金融と、直接金融はどのように使い分けができるのか」、「なぜ新興市場は短期的なIPOバブル的な側面だけが強調されて、ベンチャー企業に長期的な意味合いの投資をするのが難しい(PERが高すぎる)のか」この辺りの疑問がかなりすっきりしました。

ディー・ブレイン証券は、中小企業・ベンチャー企業向けにグリーンシートという未公開株式を売買する市場での資金調達を支援する、証券会社というよりは会計士を中心とした投資銀行。株式売買の手数料収入は収益全体の1~2%に過ぎず、主な収入源はコンサルティング費用とのこと。
グリーンシートに株式を公開するために必要なコストは、監査報酬などのディスクロージャーコストを含めて800万円ほどが平均で、その後、継続的に監査とディスクロージャーサポートの費用が年間大体500万~600万円かかるそう。1億円を募集して、年間600万円とすると金利6%ともいえるが、株式発行による資金調達なので、返済が必要な融資ではない。したがって元本返済の必要がある金利3%の銀行融資とは、資金の性質が違う。

これまでの日本の中小企業は、銀行融資による間接金融が中心だったので、どうしても借金過多で資本不足になりがちだった。また銀行の融資は、金融庁の査定マニュアルによる形式基準で、自己資本比率によって貸し出せる限界が設定されている。
一方で、グリーンシートを利用して資金調達をすると、株式発行による公募増資になる。その結果、大幅に自己資本比率が高まり財務的な格付は大きく改善される。
出縄さんのインタビューの中では、ある中小企業が、好調な新規事業の拡大のために銀行に融資を申し入れたら断られたが、グリーンシートで資金調達を済ませた後になって、「増資おめでとうございます。いかがでしょうか、うちも資金をご用意できますが……」とメガバングの担当者が訪れてきた、という例があげられています。増資ができれば融資ができる、という銀行は、調子がいいように思うかもしれないけれど、前述の金融庁の査定マニュアルによって、自己資本比率に応じた貸し出し金額が決められているので、ある意味でしょうがないのだと。

この辺りの説明を読んで、なぜ銀行の貸し渋りが起きるのかが理解できたのと同時に、「中小企業向けの融資を拡大せよ」という政治的なメッセージは根本的に矛盾してませんか?という新たな疑念もわいてきました。
中小企業の資金調達における、ディー・ブレイン証券の主な役割が、厳格な監査とディスクロージャー、企業の将来性を見極めた格付けにあるということですが、銀行の査定も根本は同じことのような気もするのですが、貸し倒れリスクを持つと色々と規制が、かかってしまうということなのでしょうか。

また、これまでの株式市場が直接金融のインフラとしてはあまり機能していない、という出縄さんの指摘も非常にわかりやすい説明です。

JMM 2004年2月3日発行
起業成功者の条件 その1
出縄良人:ディー・ブレイン証券【前編】 より

既存の証券市場には中小企業にとって上場し難いいろいろなハードルがあるんです。ハードルの1つは証券会社がビジネスの対象になる金融商品を中心に扱うということです。一般には、既存の証券市場は「流通市場」と呼ばれる株の売買が中心です。株の売買を目的としている投資家の方は、日本におよそ500万人。この投資家の投資ニーズである売買に向いている金融商品だけが上場することになります。売買に向いている金融商品、株式の多くは大きな会社ということになります。なかなか小さな会社には資金の循環が広がっていかなかった。
(中略)
発行市場を通じて企業にお金が流れてきたのは年間約1兆円ほど。そのうち新規上場時の調達に限れば1500億円程度しかありません。一方流通市場と呼ばれる株式の売買の規模は200兆円を超えています。発行市場としての機能は、流通市場に銘柄を供給するためにあるようなもので、もっと多くの企業が発行市場を中心に上場しなくてはいけない。それが今までは流通市場を中心として、株式上場時に株主の募集を行うと、その時点で、既に売却することが目的で皆さん投資するんです。もともと10人株主がいる会社に、上場時の公募に500人の投資家が応募したとして、510人中500人が既に売ることを考えているわけで、それは適正な株主構成ではないと思います。
(中略)
金融商品としての株がゆがんで解釈されているからです。金融商品として売買して切ったり張ったり、得したり、損したり……。証券会社がそんなようなものを売りつけてくるというイメージが社会にあるんですね。売買目的の株式投資を広げようと思うのに無理がある。株式投資の原点は、金融商品である株式の売買とは違うんです。

この出縄さんの解説は、かなり目からウロコでした。新興市場の現在の役割は、ベンチャーへの長期的な資金供給というよりは、流通市場への銘柄供給になってしまっていると。公募後の株主の510人中、公募で応募した500人の投資家は、売ることを前提にしているので、いびつな株主構成になる、という指摘を読んで、IPOバブルに対する違和感がかなり納得できました。
投資家として世界一の財を成した、ウォーレン・バフェットの投資スタンスも基本的には長期投資、買ったら10年は売らないぐらいの姿勢なことを考えると、今の新興市場は投資家の意識が過剰に短期リターン重視なのか、あるいは制度的な問題があるのか、いずれにせよまだまだ改善の余地があるのでしょうか。
出縄さんの著書もあるそうなので、ちょっと購入して勉強してみたいところです。

関連サイト
- グリーンシート―直接金融市場革命(amazon)
- グリーンシート市場登録のメリットとは…
- 日本証券協会 グリーンシートとは
- グリーンシートへの参入におけるIPOプランニングとの業務提携について(SBインベストメント,イー・トレード発表)

Posted by jkanekomt at 2004年02月03日 22:40 | trackBack



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