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2004年02月22日

「作家主義のジブリ」とプロデューサー高橋望

以前にジブリのプロデューサー高橋望さんの講演をきいたのですが、そのメモがあったのでちょっとまとめてみました。高橋さんがプロデューサーとしてどのような仕事をしているのか、アニメーション制作におけるプロデューサーの役割とは、これからのアニメーション制作はどのような方向があるのか、などなど、かなり面白いお話でした。

まずプロデューサーという役割について、「猫の恩返し」では3人+1人のプロデューサーがいたと。企画=宮崎駿(最初のアイデア)、制作プロデューサー = 鈴木敏夫(宣伝) 高橋望(絵コンテができるまで監督として)、ラインプロデューサー=田中千義(現場の指揮)。
企画、制作、ラインプロデューサーのすべてを1人でこなすことができたら、ベストなプロデューサーということだそうです。逆に、映画のエンドロールの時にズラーと沢山プロデューサーの名前が並んでいる場合などは、大体、制作委員会形式でつくられた映画で、参加している企業から担当者が1人づつプロデューサーとして出てきている。いってみればサラリーマンプロデューサーが10人以上リストアップされているわけで、実はプロデューサー不在を意味していることもあると。高橋さんの考えるプロデューサーの役割とは

・ 作品を完成させるために
・ 企画をまとめて大枠を決める
・ とにかく企画を実現させる
・ 監督と一心同体で悩みを解決しようとする
・ つくるからにはヒットさせる(鈴木敏夫)

ことであり、編集者の仕事に近いところがあるとのことです。作家というものは、なりたくてなるというよりは、書きたいから書いてしまうものだけど、やはり自分の書いたものについて心配、気になるときもある。そんなときに編集者は一番目の読者として、感想を伝えるのだけれど、決して問題点を指摘するのではなく「99%は素晴らしいけど、1%変えたほうが。。」というような言い方で、作家を元気づけるのが重要だそうです。

千と千尋の神隠し」については、こんなエピソードも紹介されていました。
メディアのジブリ作品に対するあつかいは、ナウシカ、ラピュタのころはアニメーションという枠のなかで評価されていたが、そのうちに映画として見られるようになった。しかし千尋のアカデミー賞受賞以降は、日経新聞は文化部ではなく産業部のアニメ担当が取材に来る=ジブリが産業として注目されるようになった。景気のよくない世の中で、明るい話題はトヨタとジブリぐらいしかないのか?ビジネス誌は「成功の方程式?」を聞きたがるけれども、そのようなものはあるんだろうか?と。
そのようなビジネス誌は「千尋を作るときには、当然、海外を意識したんですよね?」と聞いてくるのだけれど、答えとしてはそのようなことはまったくなく、宮崎さんがそんなにつくりたい作品ならOKだと鈴木さんが同意しただけにすぎないそうです。

ジブリのモデルを一言でいうならば「作家主義」であり、事業計画やビジネスプランはない。千尋は1人の少女のために生まれたのであり、「ナショナルなものだけがインターナショナルになる」のではないかと。
このようなジブリの作家主義こそが時代を切り開いてきたものの、一方でアニメーション自体も成熟してきた。小説、漫画はその存在自体に意味があるわけではないのと同じ。アニメーションとは何なのか?という議論は終わり、ジャンルとして存在が確立した。ではアニメーションで何を描くのか?という時代ではないか。作りたい人がいないと作品はできない。作りたい人が作りたいように作る時代になった。しかしながら、作家性を前面に出した作品は高畑・宮崎・押井以降、なかなか出てこないのも事実だと。
「ハウルの動く城」が一度、挫折したのも、ある意味で監督主義の挫折と呼べるのかもしれない。プロデューサー=編集者として位置づけると、監督が作家じゃないと成立しない。若手の監督にそれが期待されるが、なろうとして作家になれるのか?という問題がある。やれば?と渡すのはジブリのカルチャーだったが「本当に自分が作りたい」といえる人は、結局ハウルに関しては、宮崎さんしかいなかったのかもしれない。
宮崎さんが突出しているので、多少の才能ではリーダーシップがとれないという事実はあるけれど、世の中の雰囲気が変わってきている側面もある。”多様な意見”というモノが重視される雰囲気で、現場を束ねるような意見、合意形成がとりづらくなっている面もある。そんなときに、果たして作家を探すということはできるのか?ジブリ以外から出てくるのかもしれないが、、、との率直なお話は非常に興味深かったです。

またアメリカでディズニーとピクサーの二社を見学されたときの話も。
ディズニーは2Dのアニメはもうつくらない、3Dに特化するとオフィスの大改装をしていた。セル画のスタジオを3Dスタディオに全面移行していたが、若干ディズニーは大丈夫か?と思う雰囲気もあったそうです。
80~90年代のディズニーは、映画会社からやってきたアイズナーによって率いられており、ある意味できわめてハリウッド的なマーケティング主導の作品作りをしてきた。主題歌を重視して有名アーティストを起用したり、これからは中国マーケットだからということで中国人を主人公にしたり。当初は売り上げもあがったかもしれないが、作品性という意味では目立つ作品はなく、一方でピクサーが台頭してきた。
ピクサーは逆に非常に活き活きとしていて、会社の若さという意味ではピクサー → ジブリ → ディズニーなのかもしれないと感じたそうです。ピクサーのジョン・ラスター氏の「宮崎さんが1人でやってることを僕らは5人でやってる」という言葉を紹介されていて、ピクサーではひとりの突出した作家がいない面を、うまく複数のメンバーで補うような作品作りを実現しているとのことでした。

公開が待ち望まれているイノセンスについても、プロデューサー的な側面からこんなお話も。
押井さんは、これまで一貫してプロデューサー不在で1人で作ってきた監督だけれども、今回は鈴木さんがプロデューサーを担当して、実はこれは徳間書店の「天子の卵」以来の押井&鈴木コンビの復活。「作品を語ること」こそ編集型プロデューサーの真骨頂だとする鈴木さんと「作品は語られることで完成する」とする押井さんの二人が組むことになった。イノセンスというタイトルをつけたのは鈴木さんで、タイトルと主題歌が決まっただけで、非常に方向性が定まった部分もあったそう。
押井監督いわく「鈴木は悪党プロデューサーだ」そうで、ここでの悪党とは=ある意図をもっていて、世の中にだすためならなんでもすること。いままでプロダクションIGには鈴木さんの役割を担うひとがいなかったので、そういった意味でも今回のイノセンスは非常に楽しみだとのことでした。

イノセンス宣伝会議 鈴木敏夫ヒットの秘密(イノセンスHP)

「ニモ」効果でPixarの利益4倍に、ジョブズ氏曰く「Disneyの創造性は弱体化」(ITMedia)


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Posted by jkanekomt at 2004年02月22日 00:24 | trackBack



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