何気なくレンタルしたDVDだったのだが、見始めると、目の前に広がる北極圏の世界に、グイグイと引き込まれてしまった。映画は夏から秋へ、広大なカナダの大地が、美しく紅葉し始める季節からはじまる。数十キロ先まで見通せそうな原野を、一人歩く物語の主人公。ノーマン・ウィンターは、半世紀以上もロッキー山脈で狩りを続けてきた、最後の狩人。彼が実在の人物、その本人であるのは、映画を見終わって、監督の解説を聞いて初めて知ったのだが、何の予備知識もなく、こんなに素晴らしい映画を見れてラッキーだった。
(『狩人と犬、最後の旅』公式サイト より)
山の頂きに雪が積もり始めると、ノーマン・ウィンター夫妻、そして冬を生き抜く重要なパートナーとなる、7頭の犬たちの冬支度が始まる。カヌーでユーコンの川や湖を渡り、狩りの道を探す。斧で木を切り倒し、丸太小屋をつくる。雪が麓まで降りてきて、周囲が銀色の世界に包まれると、馬は街へと避難し、犬たちの出番となる。犬ぞりのトレーニングを始め、越冬のために薪を集め、飲料水にするための氷のブロックを、凍った湖から切り出してくる。そして、グリズリーベア、ビーバー、ムース、オオカミ、山猫、ヤマウズラ、多くの動物たちに自然のなかで遭遇し、あるときは糧として狩りの対象とする。そのすべてが、粛々としたリアリティーに満ちていて、なるほど極北の生活はこのようなものなのかと感心する。
そして厳しい極寒の冬は、氷の大地の冒険の季節。監督のニコラス・ヴァニエは、シベリア横断8000キロを犬ぞりで横断したフランスの冒険家でもあり、そもそもこの映画も、カナダの北極圏を横断中にノーマン・ウィンターと出会ったことがきっかけで制作を思いついたそうだ。その二人が出会った、氷の谷も映画の中にでてくる。氷点下40度の世界、犬ぞりを率いて山を越え、凍った湖の上を走り、猛吹雪に吹かれ、オーロラの下を進む。狩人はだいたい、500から1500キロ平方メートルを活動の場所とし、縦80Km、横20Kmの一つの峡谷を自由に移動するそうだ。北極圏の冬は、一日のうちの18〜20時間が夜であり、極寒の地に大型の機材を持ち込んで撮影することの大変さは、解説のなかでも述べられている。しかしその過酷の環境こそが、狩人ノーマンとニコラス監督が描きたかった光景。本物の零下40度の世界でなければ撮れない色のために、シーンの全編は、ほぼ実体験と呼べる手法で撮影されており、それ自体が冒険だったと監督は述べている。
地球上に残された、本物の自然を見ることができ、その場所での人と自然の関わりから、様々なことを感じることのできる素晴らしい映画だった。そして、本作のスタッフで再び、別の映画を撮ることが決まっているそうなので、こちらも期待して待ちたいところです。


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