2008年3月20日

『階段を一歩登らせてくれる』という『おもてなし』の心

Life is beautifulの中島さんの書かれた、新刊『おもてなしの経営学 アップルがソニーを超えた理由』をいただきました。ありがとうございます。ブログでは、どちらかというと一つ一つの記事が印象に残りますが、こうして書籍としてまとめて読むと、『書き手』として記事の背後にある思想というか、想いが伝わってきます。個人的にインタビューを読むのが好きなので、後半のひろゆき氏、古川氏、梅田氏との対談3連発が、それぞれ、かなーりパーソナリティの違いが出ていて面白かったです。

タイトルの『おもてなし』ですが、たしかに日本語としての独特の語彙を含んでいる言葉ですね。『User Experienceは「おもてなし」だと思っています。』という表現を紹介されていますが、ユーザーという単語の持つ、相手に対するちょっとした距離感みたいなものを、うまく打ち消してくれます。自分のつくったモノを使う人、見る人と、同じ目線に立つ。そのうえで、こうだったらいいな、という自分の想いを、所作や表現でさりげなく伝える。そういう暗黙の心遣いが、熱烈なファンを生む、ということでしょうか。『おもてなし』の心がある製品やサービスは、国境を超えて多くの人に受け入れられる。MacやiPodが日本でも多くのファンの心をつかみ、逆に海外から日本を訪れる人は、日本の伝統的な温泉旅館の『おもてなし』に感動する。

つくる人と、それを受け取る人の関係、ということを考えると、いつも思い出す言葉があります。もう、随分前に読んだ『風の帰る場所』という宮崎駿さんの対談集なのですが、そのなかで、宮崎駿さんは自身の映画づくりへの想いを、こんな風に表現されています。

エンターテイメントっていうのは何かって言ったら、間口が広いことですよ。敷居が低くて、誰でも入れるんですよ、入ろうと思えば。やっぱり(アンドレイ・)タコフスキーのやつなんて初めから入り口は狭いですよ。そう思うでしょう?

中略

『誰でも入ってください』でやってないですよ。だけど、僕がチャップリンの映画が一番好きなのは、なんか間口が広いんだけど、入っていくうちにいつの間にか階段を昇っちゃうんですよね。なんかこう妙に清められた気持ちになったりね(笑)。なんか厳粛な気持ちになったりね。するでしょう?

中略

エンターテイメントっていうのは、観ているうちになんかいつの間にかこう壁が狭くなっててね、立ち止まって『うーん』って考えてね、『そうか、僕はこれで駄目だ』とかね(笑)、そういうふうなのが理想だと思うんです。なんかこう・・・入り口の間口が広くて、敷居も低いんだけど、入っていったら出口がちょっと高くなってたっていう。壮絶に高くなることは無理ですよ、それは

風の帰る場所 p.35』 より

自分が好きなモノを並べてみると、この『階段を一歩登らせてくれる』という感覚が共通するんですね、すごく。Macも、まずは使っていて気持ちがいいから始まるけれど、そのうちに背後にあるUnixの姿が見えて、ちょこっとスクリプトを書いたりすると、数時間かかっていた手作業が、バババッっとターミナルの上で一瞬で終わったりする。Movable TypeとかTypePadみたいなブログのソフトも、Javascriptをちょこっと書いたり、APIを叩いてみると、おっ!こんなのできちゃった!とか。一眼レフカメラも、サーフィンもね、って続けると、なんだか何でも面白がる人みたいになっちゃうので止めときますが、やはり世の中には、つくり手の想いが伝わってくるものと、そうではないもの、この二つが確実に存在すると思う。それが『本物』っていうモノなのかもしれないのですが。

 

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作成日 : 2008年3月20日 18:02

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