2008年9月24日

シーリー、シモンズ、サータなど海外ブランドのベッド・マットレス選びと、ビジネス分析

引っ越しをして、ながらく使ったマットレスから、ベッドに買い替えようとリサーチ開始。これが、なかなか長い旅路になりました。まず、いくつか大手の家具店を訪れたものの、勧められるモノもまちまちで、どれがよいのか判断つかず。また、価格帯も数万円〜100万円まで開きがあって、なにゆえ、それほど大きな差が出るのか、謎は深まるばかり。シーリー、シモンズ、サータなどの有名ブランドは、何が違うのか? 調べ始めると、実はベッド、マットレス業界自体が、なかなか面白い歴史や産業構造を持っていて、結局、こんなに長いブログ記事になってしまいました。

目次

  1. 米国の著名ブランドの、米国法人と日本法人は別会社
  2. ライセンス・ビジネス = マットレス産業の歴史
  3. 日本と海外の、内外価格差
  4. ベッドに対する、自分のニーズを把握する
  5. まずはショールームで、好きなタイプ、納得できる価格帯を探す
  6. ネットでの評判を、どう考えるか?
  7. ブランド・マットレスは、趣味として開き直って楽しむべし?
  8. 米国ベッドマットレス、市場シェアランキング

米国の著名ブランドの、米国法人と日本法人は別会社

シーリー、シモンズ、サータなど、日本でも知名度の高い米国ベッドメーカーですが、日本法人は米国本社の子会社というわけではありません。『株式会社シーリージャパン 沿革』、『シモンズ株式会社 沿革』(子会社から独立)などを見れば分かりますが、米国本社から技術ライセンスを受け、業務提携をしている日本の企業というのが正しい理解。したがって、米国と日本では商品ラインナップや価格体系は異なります。

シーリーでは、高価格帯の上位モデルについては、米国から輸入して日本でも同じ製品を販売。普及価格帯のモデルについては、コイルなどの重要なパーツのみを輸入、日本の工場で製造。シモンズは日本で完全に製造しているようです。米国本社が開発した、コイルの仕組みや素材などは、特許や商標で保護されているので、これらのライセンスを独占的に供与されているのが、各日本法人という位置づけ。加えて、日本ならではの市場ニーズ(固い感覚が好まれる、など)に対応するために、日本でも商品開発をおこない、日本独自の製品ラインナップとして展開している。

ライセンス・ビジネス = マットレス産業の歴史

このようなライセンス提供によるビジネス展開は、日本固有のものではありません。例えば、代表的な企業であるSealyは、まさにライセンス事業体として創立された歴史がある。1882年のシカゴで、複数のベッド販売事業者が、持ち株会社として Sealy Inc. を設立。加入した事業者は、それぞれが半径200マイル(その後300マイルに拡張)の専売地域を占有することができた。マットレスは製品サイズが大きく、製造と在庫の保持にコストがかかるため、一種の縄張り分けをすることで、事業者同士で共存を計っていた。そのようなライセンス事業体が、次第にマーケティングや、技術開発、品質基準の設定を共同でおこなうようになり、様々な提携関係に発展していった。Sealy Posturepedic というブランドも、そのような共同ブランドとして1950年につくられました。

その後、1970年代の独占禁止法の強化によって、専売地域や価格統制は廃止される。Sealy Inc.は、最大の加入事業者であった、The Ohio Mattress Companyとのライセンス係争を経て、最終的には The Ohio Mattress Companyの下に集約された。企業統合を果たしたSealyは、事業展開を全米から海外にも広げ、1990年代にはカナダ、フランス、韓国など10カ国に直接展開するほか、日本や英国をはじめとする12カ国の現地事業者と国際ライセンスを締結した。シーリー以外の大手のマットレス製造業者も、このようなライセンス提携を通じて、事業を拡大した歴史があります。

このあたりの歴史は、以下のページで詳しく読むことができますが、まさに米国資本主義の発展を投影していて興味深いです。

まとめると、ベッド・マットレス産業は、古くから生活に密着した産業として、小さな地場工場・販売店が事業をおこなっていた。18世紀に工業化が進むと、ひとつの企業が展開できる商圏も拡大し、各事業者はお互いの共存のために、組合的なライセンス事業体を立ち上げた。ライセンス事業は、独占禁止法以降も、技術開発や共同マーケティング、資金調達の場として機能しており、20世紀後半の国際金融の発展とともに、世界中にネットワークをひろげている。つまり、シーリー、シモンズというブランド名自体が、ゆるやかに連携する、国際的な企業ネットワークを意味しているのです。

日本と海外の、内外価格差

こういうのは、あまり見ない方がいいのかもしれませんが(笑)、Sealy や Simmonsなどの有名ブランドは、本国と日本では価格差がかなりあります。日本の上位モデルの同等クラスでも、USのディスカウント・リテイラーでは半額〜4分の1ぐらいの価格設定。Consumer Search の2008年調査によれば、Simmons Beautyrest World Classが $1,050 〜 $3,200。Sealy Posturepedic は $415 〜 $1,350とされています。また、各社のマットレスの特徴もまとめられているので、米国での各社の位置づけを知るにも、よい記事だと思います。

価格に違いがあるのは、製造販売している企業自体が違うので、ある意味で当然とはいえます。価格差が出てしまう理由も、ある程度は想像できます。

  • 米国と同製品を、日本に輸入販売するには、輸送料、関税などがかかる
  • ライセンスにもとづき、コア部品を輸入して日本で製造する場合は、日本工場での製造コスト、ライセンス費用が必要
  • 米国と、日本での圧倒的なマーケット規模の違い
  • 日本では、個人リテールはさらに規模が小さく、ホテル・チェーンなどの法人営業が重要
  • 個人向け輸入ベッドの販路は、百貨店や高級家具店などで、高付加価値が求められる
  • 米国のような、ベット・マットレス専門の流通、メガストアが存在せず、価格競争がおきにくい

実際にショールームなどでメーカーの方と話をしても、日本で輸入ベッドを販売していくのは、日本ならではの工夫が必要のようです。最近流行の「外資系高級ホテルの寝心地を自宅でも!」というのも、そんなマーケティング・メッセージのひとつなのでしょう。

特に、流通規模の違いは価格に大きな影響があると思われます。例えば、米国での最大規模のベッド専門小売店は、1社で年間600億円以上を売り上げるようです (Exclusive research -- Top 25 Bedding Retailers 2008 - Furniture Today)。

リテールの市場規模が小さいと、ディスカウント・チェーンなどの価格を押し下げる巨大流通は生まれません。また、取扱量が少なければ、製造、流通、販売のコストは割高になります。このような状況で、海外ブランドが日本市場に進出するには、日本での販路を持つ販売パートナーとの提携が不可欠なのです。

しかし、これは一般の消費者から見ると、どのブランドを選べばよいのか、分かりづらくなる結果ともなっています。ブランドの拡大が、販路の拡大とリンクしているので、個別の販売店で複数のブランドを比べることが難しくなるからです。

例えば、大型店を展開する大塚家具は、キングスダウンという米国ブランドを、日本で単独展開しています。ある意味で、シーリーやシモンズの日本法人のような位置づけに、販売店がたっていることになります。これは何も悪いことではありません。キングズダウンは、米国販売シェアでもトップ10に入る、ちゃんとしたメーカーですし、直接取引をおこなうことで、中間マージンを下げることができます。ただ、店としてなるべく利益率が高い製品を売りたい、というモチベーションも生まれるのも事実。その辺りをふまえた上で、買い手は色々と比較する必要があります。(A Review Of Kingsdown Mattresses

まとめると、まず日本で買う海外ブランドのマットレスは割高。それは、アメリカに比べると、圧倒的にマーケットのサイズが小さいので、やむを得ない側面もある。そして、『適切な標準価格』や『様々なブランドを、一度に選べる大規模店』もないので、買い手としては知識が必要。次の章では、どのように知識を得るかを、考えてみたいと思います。

ベッドに対する、自分のニーズを把握する

ベッドに何を求めるか、といえば誰もが『快適さ』と答えるでしょう。ただ、『何をもって快適と感じるか』は、個々人の環境によって変化します。自分が寝る環境を改めて意識してみると、わりと具体的なベッド選びの条件につながるようです。例えば、以下のような質問を自分で考えてみる。

  • 身長は何センチか? 
    日本の標準のベッドの長さは195cmですが、一部の輸入マットレスは201cm。シモンズは210cmのロングサイズが選択可能。わずか数センチでも、圧迫感はずいぶんと違うもの。
  • 夏はクーラーをつけて寝るのか、窓を開けて寝るのか?
    柔らかくて、体が沈み込むマットレスだと、室内の温度が高いと、寝苦しく感じるよう。
  • 1人で寝るのか、2人で寝るのか?
    2人で寝る場合は、ポケットコイルを採用しているベッドだと、隣の人の動きが伝わりにくいよう。
  • 2人の場合でも、シングルを二つ並べるか、クイーンにを一つにするか?
    シングル二つの場合は、それぞれが好きなタイプのマットレスを選ぶのもあり。
  • ベッド枠は、すでにあるのか? 必要か? あるいはダブルクッションにするか?
  • 部屋の大きさはどれぐらいか? そもそもクイーンベッドを簡単に搬入可能か?
  • これまではどんなタイプのベッドに寝ていたか? 
    固めが快適と感じるか、柔らかさに慣れているか。

このように自分の寝る環境を、具体的にイメージしておくと、ショールームや販売店で、要望を伝えやすくなります。

まずはショールームで、好きなタイプ、納得できる価格帯を探す

さて、実際にベッドを探す段階ですが、個人的には、まず最初に各社のショールームに行くのがベストのような気がします。ショールームでは、そのブランドの様々な商品ラインナップを試すことができます。基本的な条件をそろえた上で、色々なタイプのベッドを試すことで、自分が好きなタイプを感覚的につかみやすい。また、上から下までの価格帯を試すことで、どのレベルで満足ができるかも納得できる。さらに、ショールームは販売をする場所ではないので、『買わなければいけない』というプレッシャーとは無縁です。

何社かショールームをまわってみると、ブランドごとの雰囲気の違いなども何となくつかめてくるでしょう。そのあとで、気に入ったブランドを扱っている販売店を、ショールームで教えてもらったり、ホームページで調べる。ショールームでも時々、特定の販売店が販売会を開くことがあるようです。

取り扱い店舗が分かったら、電話したり、実際に訪れて、自分の希望する製品の価格を聞いてみる。最終的に購入する際には、決して安い買物ではないので、信頼できてアフターフォローもしっかりしている店舗がよいのではないかと思います。

ネットでの評判を、どう考えるか?

気になったブランドを、他の人はどう思っているか、ネット上での評価は気になるところです。日本語と英語の両方で、オンライン上にどんな評価があるのか、色々と検索してみましたが、次のような点には気をつけたほうがよさそうです。

  • 日本では、個別のブランドについては、定量的な評価は少ない。かなり主観的な『感想』が多い。
  • アメリカのサイトでは、それなりに投稿の多い、マットレス専門のレビュー・サイトがある。例えば以下。
  • 多くの製品で、同じ製品にもかかわらず、「最高!」という人もいれば、最低の評価をつける人もいる。
  • 店員の説明や、自分の期待と違った、という場合でも、ダメな製品と判断しがち
  • 悪い評価の典型として、「背中や腰が痛くなった」というものがあるが、ベッド以外でも痛くなる要因は沢山ある
  • 世の中のマジョリティーは、わざわざネットで評価を書かない、『まずまず満足している人』

特に日本語の場合は、レビューの数自体が少ないので、自分のニーズを洗い出すための参考意見、程度にとどめておくのがよいような気がします。最終的には、自分で実際に体感するのがベストかと。

ブランド・マットレスは、趣味として開き直って楽しむべし?

ベッドが欲しいな〜と、気軽に調べ始めたつもりが、いつの間にか、こんなに長いブログ記事になってしまいました(笑)。結論としては、現状、日本でブランド・マットレスを購入するということは、それなりに趣味性の高い買物だと思います。本国アメリカと比べると、いかんせん価格差は大きい。寝心地を売りにしている上位モデルは、特にそう。ただし、ブランド・マットレスでなければ味わえない寝心地があるのも事実。その嗜好品としての違いを、ベッドを選ぶプロセスから楽しめるのであれば、それはそれでよし、というところでしょうか。

そのかわり、趣味として考えれば、車ほど高価でもないし、毎晩、楽しむこともできる。一般的にマットレスの寿命は10年〜15年程度とのことなので、その度に、ちょっとずつ、自分の好みに近づけていく、ぐらいのゆとりを持って選ぶのがよいのかもしれません。

米国ベッドメーカー・シェアランキング

Sealy社のホームページに、USの家具専門誌である『Furniture Today』の行っている米国ベッドメーカーの市場シェア調査からの抜粋があります。(最新の調査レポート自体もオンラインで購入可能『Top 15 U.S. Bedding Producers 2008』)

Sealy / シーリー:米国マットレスシェアランキング

これを見ると、Sealy、Simmons、Serta、Tempur-Pedicという、日本でも知名度のある上位4メーカーで、市場シェアの過半数以上(58%)を占めていて、大手以外ではシェア1〜2%程度の小規模メーカーが沢山存在しているのがわかります。

この中では、Tempur-Pedicが近年シェアを急速に伸ばしてきているようです。英語のユーザーレビューのサイトでも、評判がいいみたい。日本では本格的なダブルクッションのマットレスはまだ販売されていないようなので、ぜひ日本展開してほしいものです。

順位 会社名 2007年度売上
(100万$単位)
2007年度
市場シェア
1 Sealy
シーリー
$1,437 20.9 %
2 Simmons
シモンズ
$1,079 15.7 %
3 Serta
サータ
$885 12.9 %
4 Tempur-Pedic
テンピュールペディック
$585 8.5 %
5 Select Comfort
セレクトコンフォート
$391 5.7 %
6 Spring Air
スプリングエアー
$272 4.0 %
7 Comfort Solutions
コンフォートソリューションズ
$147 2.1 %
8 Kingsdown
キングスダウン
$140 2.0 %
9 Therapedic
セラペディック
$120
1.7 %
10 IBC
アイビーシー
$107 1.6 %
TOP15 位総合 $5,561
80.9 %
業界総合 $6,871
情報源:ファニチャートゥデイ誌 2008年6月出版号
 

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コメント

Slate で米国のマトレスブランドの marketing scam の説明記事を読むと:"The secret to mattress shopping is that the product is basically a commodity. The mattress biz is 99-percent marketing. So just buy the cheapest thing you can stand and be done with it, because they're pretty much all the same. And that's all you need to know."
なので、一番安くて気持ちいいのを買うべきです。
http://www.slate.com/id/93956/
私はヨーロッパのベッドやマトレスの方をすすめします。

Posted by: Gen Kanai at 2008年9月24日 22:34

そうですね。それにしても、日本はコモディティーなのに高すぎる(笑)
僕は最終的には、寝心地の差というよりは、日本サイズの195cmだと身長的にきついので、210cm のロングサイズがオーダーできるというシモンズにしました。

Posted by: Jun Kaneko at 2008年10月 3日 13:13

ちょうどベッドの買い替えを検討していたのでとても参考になりました。
日本でみるブランドマットレスがそれなりに趣味性の高い買物であるとすると、ノーブランドの安いもの、例えば無印良品のマットレス(クイーンで10万円ほど)などは比較的堅実な選択になりうるのでしょうか。

「長く使う」ということを考えると値段が張っても構わないと思うのですが、こういったビジネス事情を考えたり、無印のような無難な製品を見ると、だんだん適正価格というものが分からなくなってきてしまいます。

それとも、やはり安物は安物、ベッドメーカー製品に比べると全く土俵違いなのでしょうか。

Posted by: takeshi at 2008年10月10日 14:40

英語だけのコメントは、スパムフィルターではじかれてしまうので、日本語でのコメントをお願いします。

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作成日 : 2008年9月24日 00:06

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