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September 7, 2004

「多重化するリアル」 何がリアルなの?

「自分というものが感じられないのです」

これは、離人症といわれる病を持つ人の訴えの例。香山リカ氏の「多重化するリア
ル」に書かれたものの一例です。この本を手にとったのは、
パラパラとめくったあるページのことばから目を離せなかったから。
「じゃ、、あなたはどうしてリアリティをかんじているの?
リアリティってそもそも何なの?」
どう答えますか?

多重化するリアル―心と社会の解離論 廣済堂ライブラリー
香山 リカ

おすすめ平均
読み応えあり

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離人症や多重人格障害が増えているそうです。幼少期の経験、環境など何らかのトラウマの存在が引き起こすと考えられていたけれど、
香山氏は、トラウマなき離人症の増加と社会の関連に着目して、「多重化するリアル」を書いています。

典型的な離人症の人の訴えは、こういうものだそうです。
「自分というものが感じられないのです」、「今ここで話しているのが本当の自分とは思えない」、「感情というものが生き生きとわいてこない」、「自分のからだが自分のものではないみたい。なんだか操作しながら動いているみたい」、「友達や家族を見てもだれだかはわかるが、親しみというものがわいてこない。好き嫌いもわからない」、「悲しいことや楽しいこともぼーっと見ているだけ、泣いたり笑ったりはできるが、演技しているみたい」、「自分とまわりの間にカーテンがかかっている。自分はその外からしか回りを見ることができない」、「学校や家で話していても、ドラマや映画のセットにいるみたい」、「今が夢なのか現実なのか、ピンとこない」、「きれいな景色を見ても絵か写真を見ているみたい。それが現実のものだとは思えない」、「胃の中がからっぽとか足が冷えているとはわかるけれど、おなかがすいたな、寒いなといった感じがわいてこない」、「話したり仕事したりしている私を、どこか遠くにいる私がじっと見ている」・・・。

離人症の定義のひとつとしてあげられているもの:
①自我とか自己とかいわれるものの変容感ないし空虚感、あるいは消失感。自己の体験や行動にかんする自己所属感ないし能動性意識の喪失。
感情の疎遠感ないし消失感。
②自己の身体を含めた対象知覚界の変容感ないし疎遠感。対象の実在感の希薄化ないし喪失感。美意識、意味意識の喪失。
③時間帯兼と空間体験の異常。充実感と連続感の喪失。
(「現代精神医学大系第三巻B<精神症状学Ⅱ>」中山書店、1976年)

うーん、これだけ書くと、結構ヘビーです。
でも、わからないこともないかもしれない。
だって、リアルを感じている自分は何ですか?
答えられますか?
このような感想をここで書くのはやや勇気がいることでした。離人症とそうでない、との決定的な差は何だろう。一生懸命自分の存在を追い求めようとしていない、と言ったらウソだし、焦っていないと言ったらウソだし、でも、私は離人症?そもそも、離人症って正常じゃないの?

香山氏が、離人症に興味を持った理由としてこのように書いています。「なぜ私は、当時はまだ症例も少なかった離人症などに興味を持ったのか。それは、『まわりにリアリティが感じられない』という彼らの訴えは、私たちに、『じゃ、あなたはどうしてリアリティをかんじているの?リアリティってそもそも何なの?』と
いう問いを突きつけるからです。」と。

はっきりとしたトラウマがないのに増えているのは、なぜだろう?これが香山さんの問題意識のはじまり。ちょっと長いけれど、あとがきから引用します。

 「トラウマという問題から離れて解離性障害や解離を思わせる若い人たちの現象をながめてみれば、そこには現代という時代との密接なつながりがみえてきました。あらゆる価値が不安定となり、感情や直感がすべての判断のもとになっている社会。そういう中にいる人たちがおびただしい情報や映像に触れることによって、ただでさえ薄れ掛けていたリアリティは、あっという間にさらに希薄になっていきます。そうして、何を見ても実感がわかない、自分の存在じたいピンとこない、という離人感覚ができあがる。
 さらに、インターネットや携帯電話などの情報機器の発達は、日常の中に様々なバーチャル空間を出現させます。私たちは、まるでパソコンのモニターの上にたくさんのウィンドウを開いていろいろな作業を同時進行させるように、現実世界の中でたくさんの"別の世界"を平行して走らせるのです。いくつもの肩書き、いくつもの考え、いくつもの恋愛、いくつもの自分。かくして、ごく自然に多重人格的なふるまいをする人たちが現れることになります。」

 解離は、病理なのか、現実への適応なのか、あるいは人間の進化なのか。出版された2002年から2年がたちました。社会はさらに大きく変化している。香山さんは、どうとらえているでしょうか。続きをぜひ読んでみたいです。

投稿者 asaka : September 7, 2004 2:44 PM

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