« チョコレボ!ミーティング@バンコクキッチン | メイン | ウェディングギフトは何にしよう »

September 9, 2006

豊かで深い世界へと導いてくれる最高の一冊「<狐>が選んだ入門書」

"ものすごく"いい本と出会った。偶然の出会いという意味では、人と同じだ。ちゃんと機会を大切にするか、今度…と見送るか。良い出会いとなった本、「<狐>が選んだ入門書」(村山修、ちくま新書)という。インターン生が貸してくれたこの一冊のおもしろさに、読みかけの本をそっちのけで読みきってしまった。

「入門書こそ究極の読みものである」・・・冒頭に書いてある言葉に、少しひっかかる人がいるかもしれない。私も最初は「うーん…でも、入門書っておもしろくないよね?」と思っていた一人。でも、書評家・狐は、入門書というのは「ヘーゲル入門書」のような本を指すわけじゃないという。狐は、難解な内容を読みとくための本を「手引書」と呼び、入門書と区別している。じゃあ、入門書は…?本文から少し引用してみます。

「(私のいう入門書は)ある分野やことがらを対象にして、一般の読書人に向けられた本ではあります。あくまでも平明な文章でつらぬかれた本でなければいけません。しかし、…(ヘーゲルなど)何か高みにあるものをめざすための手助けとして、段階として書かれた本ではありません。…むしろそれ自体、一個の作品である。ある分野を学ぶため補助としてあるのではなく、その本そのものに、すでに一つの文学世界が自立的に開かれている。思いがけない発見にみち、読書のよろこびにみちている。」

新しい入門書の定義に、多少の懐疑心を残しながらも、ページをめくると、そこには、25の新しい世界への入り口が存在していた。「言葉の居ずまい」「古典文芸への道しるべ」「歴史への着地」「思想史の組み立て」「美術のインパルス」の各章で紹介されている25冊は、まさしく、一つ一つが文学世界を持っている。

日本の古典文学や歴史のことをもっと知りたいと思い始めたのは、有無を言わせない出会いがなくなった頃、学校を卒業をしてからだ。何を最初に読んだら、迷うほど深い文学や思想、歴史の世界へ入れるだろう…。手当たり次第に読んでも、難しすぎたり、前後関係が見えなかったり、いまひとつおもしろいというところまで我慢ができない。学校だと強制的に大量に読まされて、何年かするとつながるのだが、仕事をしているとそこまで集中的にひとつのジャンルを読めない(というのはちょっと言い訳っぽいけれど)「今度こそは、現代思想になじむぞ!」と思って入り口になる本を探していると、狐がいうところの「手引書」(現代思想入門!なんか)を手に取ることが多い。でも、大概そのつまらなさに、分野全体から気持ちが離れてしまう。"傷"が癒えた頃に再チャレンジしても、何度、歴史や古典文芸の壁を前に挫折したものか…。

今回、「<狐>が選んだ入門書」を読み終わってから、書籍一覧をコピーして、茅ヶ崎の図書館にすぐに行った。そして、全本の所在を確認して、片っ端から読み始めている。一冊たりともはずれなし。今まで強敵だった日本史への一歩も確実に踏み出したし、その本で紹介されている書籍へと広がることで、二歩目も三歩目も歩み始めている。三好達治「詩を読む人のために」は、ずいぶんと懐かしく、かつ豊かな現代詩へと導いてくれた。日本画や美術にまつわる数冊により、美術史にイメージしていた数字や事実の羅列というつまらなさから解放してくれた。これからは、藤井貞和「古典の読み方」、高浜虚子「俳句はかく解しかく味わう」、窪田空穂「現代文の鑑賞と批評」で空穂の現代小説案内から広がろうと思う。

良質な本から広がる、豊かで深い世界へとつながる道を示してくれる「<狐>が選んだ入門書」も、非常におもしろい。まぎれもなく、一つの文学世界を持っている良本なのである。

ちなみに、書評家・狐の本名は、山村修さん。青山学院大学の図書館司書を勤めながら匿名で「日刊ゲンダイ」で書評を書くこと20年以上。本名は、この本で初めてあかした。2006年3月に早期退職をされ、この本を7月10日に発行。そして、大変残念なことに、8月に亡くなった。強い想いのこもった一冊だと思っていたが、命をかけていたのだ。私としては、良い方と出会った翌日に耳にしたニュースだったため、大変ショックを受けてしまったがご冥福をお祈りいたします。

“狐”が選んだ入門書
“狐”が選んだ入門書山村 修

筑摩書房 2006-07
売り上げランキング : 8546

おすすめ平均 star
star最後の書評
star生命の最後の輝きが生んだ珠玉の1冊…

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

投稿者 asaka : September 9, 2006 11:55 PM

Trackback Pings

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.goodpic.com/admin/mt-tb.cgi/789

コメント

コメントしてください

英語だけのコメントは、スパムフィルターではじいてしまうので、日本語でのコメントをお願いします。





名前などを保存しますか?