February 2007 Archives

雁と鯉の封緘印

昨年から、私が毎月楽しみにしていることがあります。それは、素敵な素敵な書家・華雪さんに、篆刻と書道をご指導いただくこと。書道にいたっては、熱が2、3日間出るほどの経験で、未消化なのでまた今度。篆刻も、少しずつおもしろさや野望!?が出てきました。

今回つくったものは、封緘印(ふうかんいん)。封筒の封をするときに、封筒ののりづけしたところに「〆」とか「緘」「封」て書きますよね。封緘印を捺して出すことは、手紙の正しい出し方といわれていて、私も「〆」を記すようにしています。

ところで、封緘の習慣は、判子の歴史とも関わっているのだと今回知りました。そもそも、紙が発明される前の中国では、竹や木片に文字を記し、その木片を重ねて、紐でしばっていたのだそうです。そして、その紐の結び目に粘土を載せ、そこに印を捺していたのだそうです。西洋では、泥で封じることから、蝋で封じることに発展。封蝋は、今も見ますよねー。

それでは、今回の封緘印をご紹介!
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「雁」と「魚」の文字をデザインしました。すてきでしょう:-)
雁や魚は、中国の故事から手紙にまつわるモチーフとされていて、「雁足」とか「双鯉」という、便りを指す言葉のもとになっています。例えば、匈奴の捕虜となった蘇武が、漢にもどるきっかけとなった逸話には、雁が運ぶ手紙が登場します。(ここに紹介されていました。)それから、魚については「双鯉」という古楽府の詩の中に故事が残されていることを教えてもらいました。ちょっと面白いのです。

客従遠方来 遺我双鯉魚 呼児烹鯉魚 中有尺素書
(友人より一対の鯉が送られてきた。開けるとお腹の中に手紙がありました。)

どうやら、当時の人々は、鯉の贈呈を通じて手紙のやりとりをしていたのです。え、お腹のなかに手紙?と思ったら、実は、折り紙で魚をつくり、その中にいれていたのだそう。風流なやりとりですね。

クラスでは、魚や鳥をモチーフに、絵を彫ったり、文字を刻んだり、自分の名前を入れたり、自由なデザインがたくさんうまれていました。私は、シンプルだけれど、白川静さんの辞書をめくりながら、二つの印象的な故事由来の言葉をデザインしてみました。嬉しいなー、今回はけっこう上手に彫れた!さぁ、どんどんと手紙を書きますぞ。

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それにしても、雁の文字のなかには、鳥ちゃんがいて、魚の文字には魚っぽい感じがあるのがおもしろいと思いませんか?漢字の魅力にもはまっているこの頃です。白川静さんの本も少しずつ紐解いていますが、おもしろいですよー。

白川静文字講話〈1〉
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just a little light

明け方の前後に、突然目が覚めることがある。白い壁にうつる不思議な光とあまりの眠さにどこで何をしているのか迷うような瞬間が、いつも好きだ。隣の寝息ではっと現実に戻る瞬間の空間のゆらぎに、思わずやられたと思い、小さく笑ってしまう。違うベッドで目覚めて驚く旅の初日みたいで、いい夢に戻ることが多い。

少し前のこと。とても寒い朝に写真を撮った。眠くて、寒くて、ベッドからできるだけ少ない量の腕を出してカメラを構えた。すごい写真じゃないかもしれないけれど、私は好き。だから、何だか嬉しい。好きだと思える一枚を撮れたことが、少し意地になって撮れたことが、久しぶりで嬉しい。

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写真を見ていて、ふと思い出した人がいる。Uta Barth。ドイツ生まれ、LAで活動する女性写真家。きっと朝香は好きだと思うと彼から贈られた写真集で初めて作品を見た。ピントのずれた彼女の写真は、見るというよりは、自分の神経や空間を作品に織り込むようになじませるようにすると、ある瞬間に心に絵が入り込むことがある。そして、別の何でもない時にその絵が記憶にのぼることがある。柔らかいのに力強い作品、ぜひ展覧会で見てみたい。

Uta Barth
JOURNAL OF CONTEMPORARY ART - interview with Uta Barth

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疑問と共に、今、生きる

Be patient towards all that is / Unsolved in your heart / And try to love the questions / Themselves.(心のなかにある 答えのでていないこと全てにも、忍耐強くありなさい)

リルケといえば、20世紀を代表するオーストリアの詩人。難解というイメージが先行して、作品とじっくりとつきあうことが今までなかったけれど、1月のあたまに、400編ほどの詩に目を通しているときに(仕事)この作品とばったり出会った。何度も目を通している資料なのに、はじめてひっかかるという不思議。

それから4週間ほどたつのに、ふとした瞬間に、リルケの言葉が頭をよぎっている。"Do not seek the answers / That cannot be given to you / Because you would not be able to live them. / And the point is to live everything. / Live the questions now." (すぐに与えられることのない答えを追い求めるのはやめなさい。その答えをいますぐに生きることはできないだろうから。大切なことは、すべてとともに生きること。疑問と共に、今、生きなさい。)

何が、とても気になっているのかを考えているあいだに、ひと月もたってしまった。この間、箱根で初つみれ鍋をつくり、書道で苦戦し、植物の絵を描き、弟が帰国し、大好きな友だちとお料理をし、満月のお茶会をしたり、サーフィンを何回もしたり、仕事もたくさんの新しい経験があったけれど、いろいろとあったのにどうしても、言葉で表現することができず、その理由も気になっていた。ただただ、何かを胸に生きている感覚。

そして、先日、ある方から落ち着いたね、と言われてその理由を考えていたときにこの詩の言葉を思い出した。そうか、疑問とともに生きることができるようになってきたから、落ち着いたように見えるのかなと。

自由でいいね、と言われることが多いけれど、私を良く知っている人たちは、私がけっこう焦っていることを知っていると思う。まじめすぎるのか何なのか。大学を卒業してから、いくつもの大きな選択を前に、自分は何なのかを考えてきた。何者かわからないが、何者かでありたい。でも、何者でもないという感覚とそこにある不安や焦り。

でも、何者でもなくてもいいという気が強まったのが昨年。社会や家族の一員だし、友だちや仕事の輪など、さまざまな人やものとの関係性のなかで自分をさがしてきたけれど、いろいろな中で自分をみることを、しばらく手放してもいい気がしてきた。この数年間は、そんな気がし続けてきたけれど、そうだと今は言いきりたい気がする。別に大切な人たちや場所や物事を捨てて、自分のことだけを考えたいわけではない。そういうことじゃなくて、自分が欲しいわけでもなく、ただただ、そこにありたい。

そして、続くリルケの言葉。
... And perhaps you will gradually / Without noticing it / Live along some distant day / Into the answers. (そうしているうちに、ある時、気がつかずとも、答えとともに生きているかもしれない。)

少しずつ、視界が明るく、輪郭がはっきりと見えるようになってきた。色彩が鮮やかになってきた。大切な人たちが、大切な時間が選べている気がする。自分で選んでいる感覚が強くなってきている。何となくの手応えだけれど、仕事も人とのやりとりも、まっすぐになってきたように思う。素敵な作品を作っている人を見たり、着々と自分だけの仕事を作っている人を見ると、焦らないことはないけれど、そんな時は、自分の中心を見る。海が寄せたりひいたり、波が小さなジャンプを見せたり、花が咲いたり、風が吹いたり、光が差し込んだり、透明だったりする。そういう絵をみつけられたことがすごく、すごく嬉しい。

ひとつの詩から、広がる世界に、感謝の気持ちがあふれる。芸術ってこういうことなんじゃないかと思う。

簡単に翻訳をしてみました。でも、翻訳って難しいですね。単語のまま訳すのか、意味を考えて訳すのか。できたら原文(ドイツ語)を読めるようになりたいものです。

Be patient towards all that is
Unsolved in your heart
And try to love the questions
Themselves.
Do not seek the answers
That cannot be given to you
Because you would not be able to live them.
And the point is to live everything.
Live the questions now.
And perhaps you will gradually
Without noticing it
Live along some distant day
Into the answers.

Rainer Maria Rilke

心のなかにある
答えのでていないこと全てにも、忍耐強くありなさい。
そして、そこにある疑問自体を
愛するようにしなさい。
すぐに与えられることのない答えを
追い求めるのはやめなさい。
その答えをいますぐに生きることはできないだろうから。
大切なことは、すべてとともに生きること。
疑問と共に、今、生きなさい。
そうしているうちに、ある時、気がつかずとも
答えとともに生きているかもしれない。

ライナー・マリア・リルケ

何年も読んでいるサティシュ・クマールが編集長をつとめる"Resurgence(リサージャンス)"に素敵なシクラメンの写真とともに、この詩が載っていました。"earth, art and spirit"をテーマとしたこの雑誌は、今年で40周年なのですね。両親が、比較的近くに住んでいるので、今度イギリスに行ったら訪れたい場所(学校もある)です。
私はUKから購読していますが、日本だとPeople Treeが取り扱っているようです。英語だとPDFで購入する事もできるよう。ものすごくインスピレーションを与えてくれる雑誌なので、翻訳されないかなー。誰か一緒にしませんか?