Sipping Jetstreams で巡る世界の色

初めての土地で、飛行機や船、電車のタラップから降りたときに、空気の中に感じる予感、「これは、いい旅行になりそうだ」という雰囲気。そしてその期待以上の光景が目の前に広がり、人生で数回の経験だと確信する時、それをJet Stream Momentと彼らは呼ぶ。

We are in the jet stream

テイラー・スティール監督の『Sipping Jetstream : シッピング・ジェットストリーム』は、そんなJet Stream Momentのつまったサーフ・ドキュメンタリーだ。最高の瞬間を記録に残すべく、写真はDustin Humphrey、映像をTodd HeaterとAlex Bergerが担う。次々と映し出される、モロッコ、香港、エジプト、キューバ、そして奄美大島。サーフィンの映像だけでなく、街角や人々の表情が、やわらかい光で演出されていて、旅先のメローな空気感が伝わってくる。

モロッコの強力オフショアでの高速ライディングや、バルバトスでのケリー・スレーターのワイルドなチューブライドなど、サーフ・シーケンスも超一流なのだけれども、個人的には奄美大島のシーンが好きです。海のきらめきが反射する、雨に濡れた熱帯雨林、町中の水たまりを飛ぶ蝶、手作りの水中眼鏡で潜る海人。日本にも、こんなに彩り豊かな場所があるんだと、気づかされてしまう、そして、カメラとサーフボードをもって旅にでたくなる。

Sipping Jetstreams | An Adventure in Life

Sipping Jetstreams
Sipping Jetstream

Travel keeps you young, it does this by simply putting you in situations that make you feel like a child agian, Magically lost in a moment of discovery, beautifully confused. it could be the first time you awaken to the 5;00 am call to prayer from the local mosque on morrocco's far atlantic shore. the first time you feel the weight of the egyptian sun on your shoulders. the first time you paddle out over the reefs of the carribbean. or the first time you realise that people living in squalor can achieve happiness as easily as those living in mansions. these are life¥s opportunities to shed the hustle of modernity. to join the moment . and stop sprinting towards some prefabricated goal. your heart races. your metabolism shifts into a lower gear. everything is new again. you're sipping jetstreams

旅は人を若く保つ。ただ子供に戻ったような気持ちなれる状況に置くだけで、それをやってのけるのだ。発見の瞬間に、魔法にかかったように我を忘れる。素敵な困惑。大西洋の彼方の、モロッコのモスクから流れる朝五時の祈りの声に初めて目覚めた時しかり、エジプトの太陽の重みを初めて肩に感じた時しかり、カリブの浅い珊瑚礁の海に初めてパドリングして出た時しかり、あるいは、荒んだ暮らしを送る人が豪邸に暮らす人と同じくらい容易に幸福を叶え得るということに初めて気づいた時しかり。現代性の気ぜわしさを捨て去り、その瞬間を生き、お仕着せの目標に向かってあくせくするのをやめるための、それは人生の好機なのだ。心臓の鼓動が速くなる。代謝は緩やかになる。何もかもがまた新しくなった。あなたはゆっくりと、ジェットストリームを味わう。

Sipping Jetstream
シェーン・ドリアン ダン・マロイ ケリー・スレーター

Sipping Jetstream
ライフスタイル・オブ・ジェリー・ロペス~ザ・クリーネスト・ライン a film by Dave Rastovich~ライフ・ライク・リキッド(DVD&ボーナスEP、2枚組) ジャック・ジョンソン 終わりなき夢の波間に (P-Vine BOOks) 海から見た、ニッポン 坂口憲二の日本列島サーフィン紀行 第一章 秋冬篇 海から見た、ニッポン 坂口憲二の日本列島サーフィン紀行 第二章 春夏篇
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クジラの島の少女 : Whale Rider

ニュージーランドの先住民、マオリの人々が住む村。その昔、海洋民族の祖先は、カヌーで大海原を渡り、この島にたどり着いた。クジラに助けられたことによって、Paikeaという名を授かった偉大な先祖。その末裔たる人々が、今も村には暮らしており、近くの海を訪れるクジラとも、特別な関係を残している。

クジラの島の少女

その村は、ニュージーランドの北西の端に位置し、昔とかわらない風景が残っている。それでも現代の文明は、もうずいぶんと村の人々の意識を変化させていて、村長であるKOROは、マオリの伝統の継承と、そして村を率いることになる後継者の問題に、頭を悩ましている。そんなおり、KOROの家に生まれた孫娘、PAIの成長を巡って物語は展開していく。

映画の出だしは、KOROの悩みに同調するように、ちょっと暗い雰囲気。KOROを演じた Rawiri Paratene氏が、公式サイトのインタビューでも話しているように、彼はとても正直な男だ。しかし正直すぎるがゆえに、時代の変化に戸惑い、自分の受け継いだ祖先の知識や、伝統的な武芸・芸術を、次世代に継承できないことにイラだっている。あるいは村を率いる者として、コミュニティーが断絶されることへの焦りなのかもしれない。子供ならでは鋭い感性で、PAIはそんなKOROの気持ちに感応し、祖先の伝統を受け継ごうと努力するのだが、その思いはなかなかKOROに届かない。

物語の舞台となる、自然に囲まれた美しい海辺の村 Whangaraは、実際に存在する。原作の情景描写を読んで、プロデューサーのJohn Barnett氏は、この村で撮るしかない、と思ったそうだ。映画の中にでてくる村の集会所や、部族の象徴ともいえる巨大なカヌーも、実際のものが利用されている。映画のクルーも、村の人々と時間をかけて交流し、エキストラとして多くの村人が出演しているそうだ。監督や出演者も、すべてマオリのバックグラウンドを持っており、自らのルーツにたいする、並々ならぬ思いの強さが、素晴らしい演技に結実している。

民族の伝承は、踊りや武芸、あるいは様々な儀式として、目にすることができる。しかし、それがどのような意味を持っているのか、ルーツを共有しない外部の人間が知るのは難しい。とくに、伝説や神話など、人と自然、そしてその外側にある見えない存在との関係性を記述するものは、そこに書かれている内容以上に、それを伝え、話す文脈にこそ意味があるからだ。

村という社会の単位は、グローバルな世界から見たら、いかにも小さく閉鎖的にみえる。しかし、「その昔、海にむかって語りかけた先祖の言葉を、クジラたちは聴いていた」という物語の広がりは、地理的な距離とは異なったスケール感をもっている。その存在を感じ、自然のなかの僅かな気配に気づくだけでも、日常生活はより大きなものに開かれていくに違いない。小さなコミュニティーにとっては、それはひとつの指針となり、その言葉を話す者が、部族の未来を語るのだろう。この映画が、マオリの物語だけでなく、何か普遍的なものに感じられるのは、おそらく誰もが、自らの民族の言葉を内に持っているからではないだろうか。エンディングにむけて高まる爽やかな感動は、そのような共感からくるのかもしれない。

WHALE RIDER the movie(公式サイト)

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クジラの島の少女
ケイシャ・キャッスル=ヒューズ ニキ・カーロ
アミューズソフトエンタテインメント 2004-06-25

by G-Tools , 2008/02/10

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狩人と犬、最後の旅

何気なくレンタルしたDVDだったのだが、見始めると、目の前に広がる北極圏の世界に、グイグイと引き込まれてしまった。映画は夏から秋へ、広大なカナダの大地が、美しく紅葉し始める季節からはじまる。数十キロ先まで見通せそうな原野を、一人歩く物語の主人公。ノーマン・ウィンターは、半世紀以上もロッキー山脈で狩りを続けてきた、最後の狩人。彼が実在の人物、その本人であるのは、映画を見終わって、監督の解説を聞いて初めて知ったのだが、何の予備知識もなく、こんなに素晴らしい映画を見れてラッキーだった。

kariudo.jpg

『狩人と犬、最後の旅』公式サイト より)

山の頂きに雪が積もり始めると、ノーマン・ウィンター夫妻、そして冬を生き抜く重要なパートナーとなる、7頭の犬たちの冬支度が始まる。カヌーでユーコンの川や湖を渡り、狩りの道を探す。斧で木を切り倒し、丸太小屋をつくる。雪が麓まで降りてきて、周囲が銀色の世界に包まれると、馬は街へと避難し、犬たちの出番となる。犬ぞりのトレーニングを始め、越冬のために薪を集め、飲料水にするための氷のブロックを、凍った湖から切り出してくる。そして、グリズリーベア、ビーバー、ムース、オオカミ、山猫、ヤマウズラ、多くの動物たちに自然のなかで遭遇し、あるときは糧として狩りの対象とする。そのすべてが、粛々としたリアリティーに満ちていて、なるほど極北の生活はこのようなものなのかと感心する。

そして厳しい極寒の冬は、氷の大地の冒険の季節。監督のニコラス・ヴァニエは、シベリア横断8000キロを犬ぞりで横断したフランスの冒険家でもあり、そもそもこの映画も、カナダの北極圏を横断中にノーマン・ウィンターと出会ったことがきっかけで制作を思いついたそうだ。その二人が出会った、氷の谷も映画の中にでてくる。氷点下40度の世界、犬ぞりを率いて山を越え、凍った湖の上を走り、猛吹雪に吹かれ、オーロラの下を進む。狩人はだいたい、500から1500キロ平方メートルを活動の場所とし、縦80Km、横20Kmの一つの峡谷を自由に移動するそうだ。北極圏の冬は、一日のうちの18〜20時間が夜であり、極寒の地に大型の機材を持ち込んで撮影することの大変さは、解説のなかでも述べられている。しかしその過酷の環境こそが、狩人ノーマンとニコラス監督が描きたかった光景。本物の零下40度の世界でなければ撮れない色のために、シーンの全編は、ほぼ実体験と呼べる手法で撮影されており、それ自体が冒険だったと監督は述べている。

地球上に残された、本物の自然を見ることができ、その場所での人と自然の関わりから、様々なことを感じることのできる素晴らしい映画だった。そして、本作のスタッフで再び、別の映画を撮ることが決まっているそうなので、こちらも期待して待ちたいところです。

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狩人と犬、最後の旅 コレクターズ・エディション
ノーマン・ウィンター メイ・ルー アレックス・ヴァン・ビビエ
ポニーキャニオン 2007-03-21

by G-Tools , 2007/11/19

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ナイロビの蜂

DVDで、『ナイロビの蜂』という映画を見た。シティ・オブ・ゴッドのフェルナンド・メイレレス監督、数多くの傑作・スパイ小説を書いてきたジョン・ル・カレが原作。それだけでも傑作の予感がするところ、レイチェル・ワイズが本作で2005年のアカデミー助演女優賞を受賞している。 

見終わった感想は、豪華な製作陣に対する期待をも遥かに上回る素晴らしさ。アフリカ、ケニアを食い物にする製薬企業と国家の癒着、腐敗と、それを追求する人々の愛、そして死。ジョン・ル・カレの重厚な原作が、メイレレス監督の独特なドキュメンタリー・タッチのカメラ演出と相まって、2時間を静かな緊迫感で包んでいる。『ロシア・ハウス』のような、緻密な陰謀ストーリーが練り込まれつつも、舞台となるアフリカの雄大さが、風景と共に、大地に立つ登場人物の人間性をより鮮やかに描き出している。

アフリカで表出する、先進国の矛盾というテーマでは、『ブラッド・ダイヤモンド』がテーマ的には近いのかもしれないが、『ナイロビの蜂』は派手なドンパチを排除するかわりに、スラムのリアリティ、貧困や暴力に対する無力と葛藤、それでも自分を突き動かす信念と愛情、そのような多彩な感情の起伏によって、見るものを揺さぶってくる。

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ナイロビの蜂
レイフ・ファインズ レイチェル・ワイズ ダニー・ヒューストン
日活 2006-11-10
評価

インサイド・マン ホテル・ルワンダ プレミアム・エディション M:i-3 ミッション:インポッシブル3 スペシャル・コレクターズ・エディション ミュンヘン スペシャル・エディション パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト スペシャル・エディション

by G-Tools , 2007/09/02

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ライディング・ジャイアンツ

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サーフィン雑誌の表紙を飾る、巨大な波の頂上から果敢にドロップするサーファーの姿。波という定義を遥かに超えた、ジャイアント・ウェイブがブレイクするポイントが、世界にはいくつか存在する。

その海にパドルアウトを許されるのは、ほんの一握りのエキスパートのみ。さらに、未開のポイントに初めて挑むことができるのは、未知の恐怖に打ち勝つことに自分の命をかけた、数少ないレジェンドと呼ばれる男たちだけだ。名のあるサーフポイントには、そのような伝説が必ず刻まれている。『ライディング・ジャイアンツ』は、世界に名だたるビッグウェイブ・ポイントの伝説を追ったドキュメンタリーだ。

1950年代に、カルフォルニアからハワイに流れついたサーフ・ヒッピー達。ビーチで寝泊まりしながら徐々に開拓していったノースショアの物語は、古きよき時代への憧れ。そして、グレッグ・ノールがタブーを打ち破ってチャレンジしたワイメア・ベイのビッグウェーブは夢の物語。

サンフランシスコの南のマーベリックス。冷たい海が断崖絶壁に打ちつける、アウターリーフの巨大な波に、1975年からただ一人で向かい続けた、ジェフ・クラークの至高のストイズム。

そして、レイアード・ハミルトンという革新者による、トウイン・サーフィンの発明。ジェットスキーの牽引によって、人間の身体的な限界スピードを突破。初めて地球最大の波の速度に追いつき、ついにマウイ島のJAWS(ジョーズ)、タヒチのTeahupoo(チョープー)という未踏峰に人類が足を踏み入れる。特にTeahupooでのレイアードのライディング映像は、本当に凄まじい。こちらのページに写真が何枚かあるけれど、ダンプカーが余裕で通れるようなチューブの大きさ。水がどのような形に姿を変えるかという点でも、人間の想像を遥かに超えている。

出演するサーファーたちの、極限の集中力を支える意思の強さと、どこまでも透明な探究心が、画面を通じて伝わってくる。ステイシー・ペラルタ監督の入念な調査とインタビューによって構成された『ライディング・ジャイアンツ』は、サーフィンへのある種の信仰心すら感じる、サーファーのための聖典なのかもしれない。

ライディング・ジャイアンツ
ライディング・ジャイアンツ
ドキュメンタリー映画 ステイシー・ペラルタ
東北新社 2006-01-27

ビラボン・オデッセイ ステップ・イントゥ・リキッド スプラウト スペシャル・エディション YOGA Gerry Lopez Style VOL.1 パドルアウト‾呼吸の調和 トロピカライズ

by G-Tools , 2007/04/11

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DOLPHIN GLIDE

海面は、海の上から見るよりも、水中から眺める方が遥かに美しい。ダイビングや素潜りをしたことがあれば、誰もが一度は海の底から見上げた水面の美しさに見とれた経験があるだろう。どこまでも広がる青い天井が揺らめいて、太陽の輝きが光りの群れをつくり、水の中あたり一面を動き回る。

流線型の体も、強い尾びれも持たない人間は、その中をスローモーションのように漂うだけだ。その姿を横目に見ながら、イルカは優雅に飛び回る。圧倒的にスピードが違うふたつの生物が、限りなく近づける数少ない場所が波の中だ。人間は流線型のサーフボードの浮力を借りて、水の中を伝わるエネルギーの速度まで一気に加速する。その姿を見つけたイルカは、水面を挟んだ反対側から同じ波に乗る。その瞬間に交わしたイルカの視線からインスピレーションを得て、ジョージ・グリノーがつくりあげた映像が、DOLPHIN GLIDE(ドルフィン・グライド)だ。

dolphin-glide.jpg

公式ページ : George Greenough's Dolphin Glide ( Quicktime動画もあります )

21分間のフィルムにおさめられている光景は、この映画を見ない限り、絶対に他では見る事ができないだろう。ジョージ・グリノーの、サーファーとしてのとてつもないチューブライディングのセンスと、水中撮影の機材をDIYで作り上げてしまう技術。そして、まだ開拓されつくされていない時代の、オーストラリア海岸線でのイルカとの出会い。そういったいくつもの偶然が、一瞬のインスピレーションによってリンクして、長い長い撮影期間を経て、ようやく形になったのが、この映画だからだ。

見た事のない映像に、グイグイと引き込まれることは間違いない。それに加えて、音楽もいい。さらに素晴らしいのが、26分のメイキング・ドキュメンタリー。「どうやって撮影したんだろう?」という疑問に答えくれるのはもとより、ユーモアたっぷりのふざけたオヤジであり、ハードコアなサーファー、映像作家でもあるジョージ・グリノー本人の個性が、かなりナイスです。

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ドルフィン・グライド
ジョージ・グリノー ドキュメンタリー映画
ジェネオン エンタテインメント 2005-12-16

ブルー・プラネット DVD-BOX ‾癒し‾ Vol.4 イルカ 皇帝ペンギン プレミアム・エディション クリスタル・ボイジャー スプラウト スペシャル・エディション

by G-Tools , 2007/03/18

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Baraka : 24カ国の空間をつなぐドキュメンタリー

旅行にでてしばらくたつと、自分のリズムで街角を歩けるようになる。自分の姿が、異国の風景の一部となる、そんな瞬間に、ハッと自分が遠くに来たことに気づく。ガイドブックの写真ではない、目の前に広がる見知らぬ光景。

ドキュメンタリー映画「Baraka」が見せてくれるのは、空間と一体化した体験としてのイメージ。6大陸24カ国で撮影されたシーンが、次々と目の前を通り過ぎる。月に輝くアンコールワット、バリのケチャダンスで陶酔する歌い手、アフリカの草原、日本の満員電車、皆既日食、禅、ニューヨークを流れるタクシー、ガンジス川の沐浴、嘆きの壁、メッカ巡礼。

大自然から大都会に、流れる時間は伸びたり早まったり、自在に形を変える。世界中で録音された歌や音は、場所から解き放たれて、別々の風景をつなぐ。

このWEBページでは、映画の各シーンの場所を詳しく知ることもできます。

訪れたことがある場所も意外と多い。日本もお気に入りのようです。その見知った場所ですら、まったく知らない光景として再体験させる、不思議な映像表現。大きな画面で見ることをお奨めします。

photo
Baraka (Ws)
Ron Fricke
Mpi Home Video 2001-09-25
評価

by G-Tools , 2006/08/13

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象の長距離コミュニケーション 坂本龍一のELEPHANTISM

全身に感じよう、アフリカ。降り注ぐ太陽、青空に踊り散る雲、草いきれ、砂漠の熱気、象の声。飲み干そうアフリカの水。人類の起源の発する律動、それは我々を覚醒させてくれるかもしれない。世界はまだ若いのだ、人類は幼いのだ。智慧を求めて、我々は彷徨い続けている。坂本龍一は、アフリカで果たして何をみたか?

坂本龍一のアフリカ ― ELEPHANTISMというDVD書籍の出だしの文。アフリカには前から興味があったものの、旅立ちを後押ししてくれるには十分なほど魅力的なドキュメンタリーです。
NYに住んでいる坂本龍一さんが、911事件で受けた衝撃から、人間の攻撃性というものの根源を見極めるためにアフリカに旅立つ。という出だしではあるものの、アフリカの大自然のなかで、人間のひとつの感情が小さく見える、より大きく包含する何かに気づいていことによって、生物としての感覚を取り戻す過程が、美しい風景と音楽で奏でられています。

その中でも「象とコミュニケーションするための辞書をつくっている」ジョイス・プール博士、象の鳴き声の研究と音楽、音という共通点を持つ二人の対話は、アフリカに住む象についての、深い知識をもたらしてくれます。対話の後には坂本教授が、サバンナの象の群れのなかでピアノを弾く。その結果は見てのお楽しみということで、ここではDVDで紹介されている、象についての知識をすこし整理してみます。


象は子供を4~5年に一度産み、ほとんどは一頭のみ。ごくまれに双子が生まれることもある。1歳半~2歳ぐらいで牙や歯が発達し、オスの牙はメスよりも太く、頑丈になる。
オスは14歳ぐらいまで家族の群れに留まって、その後独立する。14~15歳ぐらいの間に、徐々に時間をかけて旅立ちの準備をして、オスだけのブル・エリアと呼ばれるグループに参加する。発情期になると、色々な家族を訪れてメスを探す。相手を見つけると、3日間だけ一緒にすごすそう。メスをめぐる競争もあって、一頭のメスを30頭のオスで奪い合うこともあるそうだ。
オスの象は50歳前後まで、成長を続けて大きくなる。メスは途中で成長が止まるので、最大でもオスの象の半分ぐらいの大きさ。

象は家族でグループをつくるけれど、エサが豊富かどうかなど、周辺の環境によっていくつかのグループに分散することもある。何らかの家族関係にある複数のグループは、ボンド・グループと呼ばれ、同じグループに属していたり、同じ家族の仲間は、互いに特別な方法で挨拶をする。


ジョイス・プール博士は、何千種類もの鳴き声を収集、分析していて、象たちの非常に複雑なコミュニケーションの意味を理解しようとしている。たとえばグループの中で、ある一頭が「さあ出発しよう」という鳴き声を発すると、それに答えるかたちで、みんなでどこに行くかが話し合われ、時には意見が割れることもある。その議論には、家族全員ではなく大人だけが参加するのだけれど、非常に長い時間をかけて結論に達することもある。他にも、象たちが楽しくなってくると交互に交わす、トランペットのような鳴き声や、子供が母親に乳をねだる声など、DVDで聞くことができます。

象が発する低周波の鳴き声は驚くべき強さで、最高で112デシベルぐらいある。この鳴き声は最大で10Km先まで届いたこともある。周囲の環境さえ整えば、10Km先の象ともコミュニケーションをとることができるのだ。ただし、個別の声の識別となると2Kmぐらい。
それに加えて、象は足を通して低周波をキャッチすることができることも、最近発見された。ゾウの足の裏は非常に繊細にできていて、そこからの刺激が耳まで伝達される。かれらはこの音を、30Km~40Km離れたところでもキャッチすることができる。
この領域は、まだ研究が始められたばかりだが、雷の音をキャッチしたり、こちらでは雨が降っていると認知できるように、40Kmのゾウの存在も認識できるのではないかと考えられている。


人間が観察するゾウの群れは、目の前の視界に入る10数頭かもしれないけれど、ゾウにとっては、さっき通り過ぎていった近くの群れも一緒のグループなんだという認識の違いがある。
また象は高い認知能力も持っている。サファリの車の中に乗っているドライバーを見分けて、以前に象の群れに危害を与えるようなことをした人物には、そのずっと後にも攻撃的になることがあるそうだ。また、人々が英語やスワヒリ語など、違う言語を話しているのを聞き分けることもできて、像を殺すこともあったマサイ族のことを非常に恐れる。ただし、同じマサイ族でも女性には攻撃をされないことを分かっているので、男性だけを避けようとする。


坂本龍一のアフリカ ― ELEPHANTISM より

遠くから何かが聞こえてくる、遠雷かもしれない。しかしそれはもしかしたら、数十キロ先に草をはむ動物のつぶやきを僕たちの耳が、何かの拍子に聞き取ったのかもしれない。人間には不可聴域といわれる低周波のサウンドでも、サバンナでならわれわれの全身と、大地と、空気が共鳴して、何がしか感じ取れるのかもしれない。そんな気にさえ、させられる。サバンナには、象がいる。

象は、コミュニケーション能力が実に優れた動物である。人間には聞き取れない音も駆使して、さまざまな意思を互いに伝え合う。ある地域にいる100頭の声をそれぞれに聞き分ける、仲間の声だけでなく、人間の声も聞き分ける。匂いも嗅ぎ分ける。一度嫌なことをされた相手は実によく覚えている。像の前で人間は、嘘などつけない。正体を彼らには見破られている。そう思ったほうがいい。

繊細なかれらが緊張すれば、いかに鈍感な人間であろうがぴりぴりとした空気の振動を感じるはずだ。そしてリラックスしたときには、その優雅な雰囲気がぼくたちの全身を包んでくれる。
象たちは、われわれ人類など、とても相手にならないくらい長いこと、この星で暮らしてきた。
遠い昔、人間の祖先が木からおりて草原にあらわれたとき、象たちはどう思っただろうか。やんちゃな小さな動物を、手に負えぬと笑ったのだろうか。未来が思い遣られて深いランブル(うなり声)でも出しただろうか。いや、やはり今と同じように、横目で見ながらゆったりと自分たちの時間をすごしていたのだろう。

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