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2003年11月17日

進化するオープンソースの水平分業:クリエイティブ・コモンズは新しいITコンサルタント?

クリエイティブ・コモンズ(Creative Commons)とは何だろう?インターネット時代の著作権のありかた、ポリシーの宣言が具体的な主旨ですが、それとは別の次元で、何か新しい価値観を提示しているような気がしていました。最近のCNetの二つの記事を読んで思ったのは、オープンソース開発コミュニティーの新しい水平分業の形なのかな?という点です。オープンソース開発における、ユーザーのユースケース分析、ソリューション提案の部分を独立させ、テーマを著作権に絞るとクリエイティブ・コモンズ・プロジェクトになるのではないだろうか?
レッシングブログの「クリエイティブコモンズの技術チャレンジ」でとりあげられている、クリエイティブ・コモンズのページに行くと、以下のような一文の解説が冒頭に出てきます。


Creative Commons / Technology
Are you a technologist? Want to help build Creative Commons' vision of an alternative copyright into the infrastructure of the Net? Develop pioneering Semantic Web applications? You can help! Below you'll find several suggestions for applications we need help building. Questions or suggestions? Discuss on the cc-metadata mailing list or email us privately.

「あなたはテクノロジスト(科学技術者)ですか?」という問いのあとに、クリエイティブコモンズのビジョンに共感したり、セマンティックWEB開発の先駆的アプリケーションをつくりたければ、次のような問題に対するアドバイスや提案、実装をしてくれないか?と呼びかけているわけです。
提示されている問題は、例えば「ライセンス・メタデータをバリデーション(検証)するためのアプリケーション」「WEBページに埋め込まれているライセンス・データを表示するためのブラウザ用ツールバー」など、クリエイティブ・コモンズを実装するための具体的なアプリケーションです。
つまり「我々の実現したい理想は、こういうものだ」と提示した上で、理想を実現するために必要な技術、アプリケーションを具体的に提示して、その開発に対してエンジニアの協力を募集しているわけです。このプロセスは今までのオープンソース開発コミュニティー、例えば、Apache Foudationで「オープンなJavaアプリケーションサーバをつくろう!=Tomcatの開発に皆あつまれ!」というアプローチとは一味違う意味合いがあると思うのです。
以前の記事「ソーシャル・ソフトウェア(Social Software)の難しさと可能性」で、個人向けのソフトウェアは、個人の仕事、行動、目的を観察して、より能率を上げるための手段=道具(Tool)として具体的に開発することが可能だが、集団,組織の場合(ソーシャルソフトウェア)は、そもそも目的や行動そのものが曖昧かつ、予測不可能なケースも多いと書きましたが、まさにそのような曖昧、予測不可能な部分に対して、ビジョンと具体的な実装要件をクリエイティブ・コモンズは提示しているのです。
CNET梅田さんのインタビュー記事「汎用ソフト開発で一攫千金を夢見る時代は終わった(ダイヤモンドLOOPから転載)」にも、同じような流れを予感できる発言が幾つかあります。EFFの創始者の一人で、マイクロソフトのOutlookキラーともいえるChandler(チャンドラー)開発のためにオープンソース・アプリケーション財団(OSAF)を設立したミッチ・ケイパー氏へのインタビューのなかから、ちょっと引用させていただきます。

Q, オープンソース方式による開発を採用したのはなぜですか。

A, マイクロソフトがソフトウエア市場を独占する競争環境下では、強力かつシンプルでユーザーに喜んでもらえるような製品のアイデアがあっても、商業的に成功させる方向で開発することが難しいからです。言い換えれば、オープンソース方式以外に、普通のユーザーが使う革新的なアプリケーションを開発するいい方法がなかった。

Q, 仮にマイクロソフトの市場独占問題がなければ、起業してチャンドラーの開発に乗り出しましたか。

A, いいえ、今ならやはりオープンソースとして始めたでしょう。現在は、ソフトウエアの新興企業がやっていくには厳しい環境です。それに、今市場で使われているコンピュータは、その中身にオープンソースが占める割合がますます大きくなっている。特にアップルコンピュータは顕著で、OS X、ブラウザのサファリをはじめ、かなりの部分がオープンソース・ソフトウエアによって成り立っています。

 技術をゼロから生み出してソフトウエア会社をつくり、成功して大金持ちになるというシナリオは、ニッチな分野でない限り、もはや夢物語でしょう。環境は構造的に変わったのです。しかし、オープンソースを混ぜ合わせてソフトウエアを作る方法には可能性がある。大企業にはならないかもしれないが、開発者を中心に新たな雇用を生み出すはずです。
(中略)
オープンソースの世界では他人には命令できません。どこに自分がフォーカスしてどこを人に任せるのかをもっとスマートに使い分けなくてはいけない。
(中略)
私は、これから大学で勉強しようとする若者には、コンピュータ科学ではなく生物学を専攻しろと勧めます。あるいはコンピュテーショナル・バイオロジー、ナノテクノロジー、生命科学。つまり、これからのシリコンバレーでは、ITと何か別のものが掛け合わされたところに革新の機会があるのです。


社会的にインパクトを与えるようなアプリケーションを開発するための環境は構造的に変わってきている。どこにフォーカスするか、役割分担が重要である。これからの開発はITと何かを掛け合わせたところに革新の機会がある。というポイントを指摘しています。
話を戻すと、クリエイティブ・コモンズは、この役割分担における自分たちのプロジェクトのポジショニングを非常に明確に提示しているわけです。著作権という社会性が高い領域において、ビジョンの提示から、具体的な実装要件にまでブレイクダウンする、オープン開発におけるシステム・コンサルタントのような役割を担っている。いってみれば社会にたいするソリューション提案をしつつ、オープン開発者に実装を委託することで、最終的なプロダクトの製造を実現しようとしている。こういった環境で、これまでの開発理論、ユースケース分析やUMLを利用したモデル駆動型開発などを応用するのは当然の流れで、今後オープン系プロジェクトの開発効率が飛躍的に向上する可能性もあると思います。そうなってくると、IT企業はそこでビジネスをどう展開できるのか?という点が大問題としてでてくるわけで、もはや「オープンソースを取り入れるべきか?」というような悠長な議論ではなく、激変するマーケットで淘汰されないための生き残り策を真剣に検討する必要があるのかもしれません。

Posted by jkanekomt at 2003年11月17日 16:15 | trackBack



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