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2004年01月04日

自然エネルギーの貯蔵、流通インフラとしての水素

水素エコノミー(ジェレミー・レフキン著)」の第八章「水素エコノミーの夜明け」と、「図解・水素エネルギー最前線(文部科学省科学技術政策研究所科学技術動向研究センター (著))」から水素エネルギーの生産についてまとめてみる。
今日、世界の水素生産量は年間5000億N㎥。世界の水素生産の約97%は天然ガス(メタン)やナフサなどの化石資源から製造されている。主な製造プロセスとしては、水蒸気改質法、部分酸化法、自己熱改質法があるが、天然ガスの水蒸気改質法が全水素生産の50%を占め、もっとも安価で広く実用化された方法である。水蒸気改質法は、触媒を充填した反応器の中で天然ガスと水蒸気を反応させる方法で、この過程で天然ガスから水素原子がはぎ取られ、副産物として二酸化炭素が残る。日本での水素生産量は年間150億N㎥だが6割が石油精製に用いられており、外販されているのは1.5億N㎥前後にすぎない。
天然ガスの水蒸気改質法は、当面は水素生産の主流を占めると考えられているが、一方で天然ガス生産量は2020年にピークを迎えるとの予想もある。また現状の限られた用途(アンモニア合成、石油精製、メタノール合成など)だけでなく、燃料電池発電や燃料電池自動車の普及によって見込まれる新たな需要が増大することを考えると、天然ガス価格が上昇する可能性もあり、将来的にも安価でありつづけるとは言えない。
クリーンな水素の製造方法という意味では、水(H2O)を電気で水素原子と酸素原子に分解する、電気分解法が究極の方法といえそうです。純粋な水に電解質を溶かして導電性を高めた溶液に電気を流すと、陽極(+)側からは酸素、陰極(-)側からは水素が発生するという、理科の実験でもおなじみのシンプルな方法です。だだし、現状では電気分解法でつくられる水素は、全体の年間製造量の4%にすぎない。必要とされる電気自体のコストが天然ガスより3~4倍も高いのが原因。電解質として25%程度のKOH水溶液を用いるアルカリ水電解法では、1N㎥の水素を製造するのに約4kWhの電力が必要といわれてる。アルカリ水電解のほかにも、フッ素樹脂系イオン交換膜を電解質に利用する”固体高分子電解質水電解”や、900℃~1100℃で水蒸気の電気分解を行う”高温水蒸気電解法”などが研究されているようです。
電気分解法に、太陽・風力・地熱・水力などの自然エネルギーを組み合わせることが究極のエネルギー活用方法であることは疑いようがありません。この場合、水素は「電力を発電する原料」ではなく、「場所、季節、時間帯などに依存する自然エネルギーを一時的に蓄積、再利用するための媒介」という意味合いが強くなります。つまり「太陽から地球に40分間に降り注ぐエネルギーは、全人類のエネルギー消費量のまるまる一年分に相当する」とも言われる、未開発のエネルギー源の貯蔵、流通インフラを担うことが期待されているのです。
「水素エコノミー」P252では以下のような、自然エネルギーと水素製造の組み合わせの例が紹介されています。


1995年9月26日、世界初の太陽光利用による水素製造施設がカルフォルニア州エルセグンドーで操業を開始した。この250万ドルのプロジェクトは、地元の環境団体クリーン・エア・ナウとゼロックス社との共同事業で、カルフォルニアのハイテク企業ソーラー・エンジニアリング・アプリケーションズ社が設計した先進的な太陽光発電システムで太陽光を捕えて電気エネルギーに変換し、それをカナダのエレクトライザー社製の電解装置に供給する仕組みだ。電解装置からは、一日1500~2000標準立方フィートの水素が製造される。除湿してから水素ガスを約350キログラム/平方センチの圧力になるまで圧縮し、乾燥させ、貯蔵する。この施設でつくられる水素ガスは、水素で走るように改造したフォードレンジャー製のトラックの燃料に使われている。
(中略)
アメリカ風力エネルギー協会によると、風力発電のキロワット時当たりのコストは、80年代初めの40セントから現在は5セントを切るまでに下がり、なかには3セントという地域も出てきたそうだ。風力発電がきわめて安価で効率もいいため、ガス発電と競争できるまでになった地域もある、と米国エネルギー省は言っている。あと数年で風力発電のコストがキロワット時当たり1.5セントに下がれば、風力発電による電気分解でつくった水素はガソリンに負けぬ競争力をもつようになる。
ここ数年、世界の風力発電容量は年率27.75パーセントで拡大を続けている。欧州風力発電協会は、2020年には世界の電力の一割が風力エネルギーでまかなえると予測している。風力発電産業は、世界経済でも群を抜いた成長を見せる市場分野だ。

■書籍「水素エコノミー」に関する記事
- 水素エコノミー(ジェレミー・レフキン著)を読んで
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熱力学から考える、人間と経済のエネルギー消費
- 食卓の食べ物は、石油の匂い。近代農業のエネルギー効率と都市
- 水素エコノミーは「脱炭素化」という技術発展の最終目標
- 自然エネルギーの貯蔵、流通インフラとしての水素
- 2005年には、家庭が燃料電池でエネルギーウェブにつながる
- 次世代エネルギー車の、柔軟で環境適応するエネルギー制御システム
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Posted by jkanekomt at 2004年01月04日 19:23 | trackBack



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