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2004年01月06日

2005年には、家庭が燃料電池でエネルギーウェブにつながる

エネルギーウェブの根底にある思想として、中央集権化することでスケールメリットが得られると考えられてきた領域をいまいちど見直そう、という面が大きいと思います。技術革新によって、部分最適化による分散型システムのほうが、全体の系として効率的になりうる、というアイデアをエネルギーにもあてはめた考えとして「分散型電源(Distributed Generation)」というキーワードが提示されています。具体的には、燃料電池ユニットとコージェネレーションの組み合わせを、実際に電気を使う住宅や施設などに設置することで、総合エネルギー効率を向上させようという取り組みにつながります。
一般に化石燃料などの一次エネルギーを利用した、大規模な発電所から送電網を通じて家庭で電気を利用する際には、利用していない排熱60%、送電ロス5%が引かれて、総合エネルギー効率は35%程度になるといわれています。都市ガスを利用した燃料電池とコージェネレーションシステムの組み合わせでは、送電ロスは無く、利用困難な排熱が20~30%存在するとしても、総合的なエネルギー効率は70%~80%に達し、同じ一次エネルギーを燃料にしていても、格段に効率がアップします。


水素エコノミー(ジェレミー・レフキン著)
P261~265

一般に「分散型電源(Distributed Generation)」とは、システムの一部として、あるいは独立して、最終需要地(工場、民間企業、公共施設、住宅区域、個人の住宅など)またはその近くに設置される小型の発電設備を指す。
現在、最も人気のある小型発電技術は、ディーゼル燃料か天然ガスで動くレシプロエンジンだ。化石燃料を原料とするガスタービンやマイクロタービンも、小型発電市場でシェアを拡大しつつある。しかし、ゆくゆくは水素燃料電池が主流となり、分散型電源市場を席巻するとの見方が、この分野の専門家のあいだでますます強まっている。燃料電池はユニット販売されるため、ユーザーは自分の発電需要にあわせてシステムを組むことができる。将来もっと電力が必要になれば、新たに燃料電池ユニットを買い足せばよく、追加コストもわずかしかかからない。
(中略)
分散型電源を、業界で言う「ピークカット」に利用する消費者が増えている。電力の価格は、需要や発電設備の稼動状況によって刻々と変化する。この変動をもとに、オフピーク料金、オンピーク料金、ショルダー料金といった、季節や時間帯で分けた料金区分が設定されている。需要の大きいピーク時、電力会社は旧式で効率の劣る設備もやむなく稼動させることが多い。その追加コストは、電力料金の割り増しとなって消費者に転嫁される。分散型電源システムがあれば、消費者はピーク時に商用電力系統から自家用発電に切り替えて料金を軽減できる。
将来は、インターネットや、電気自体に埋め込まれたデジタル信号を通じて、燃料電池が価格をモニターできるようになる、とジャーナリストのピーター・フェアリーは”テクノロジーレビュー”誌に記している。たとえば、リアルタイムで入ってくる天然ガスと電気の価格情報を燃料電池が分析し、分散型電源に切り替えたほうが安くつくなら、マイクロ発電ユニットのスイッチが自動的に入る、という具合だ。民間企業と住宅所有者のほとんどは複雑なエネルギー・ビジネスに通じていないので、ウィリアムズ・インターナショナル社のような新しいタイプの仲介業者が、総合的なサービスプロバイダーの役割を果たすようになる。ウィリアムズ・インターナショナルはオクラホマ州タルサに本拠を置くエネルギー企業で、すでに全米の天然ガス供給の二割をパイプラインで移送している。同社は、「すべてがそろったエネルギー・サービスをパッケージで提供している。それには、マイクロ発電ユニット購入のための融資や、電力系統を介した電力供給、ピークカットへの切り替えどきを判断するための消費者への手助けが含まれる」


では、このような分散型電源が未来の技術なのかというと、実は2005年~2010年に導入段階、2010年以降は普及段階という、かなり積極的な普及目標が立てられています。
図解・水素エネルギー最前線(文部科学省科学技術政策研究所科学技術動向研究センター (著))」(P63)によれば、
経済産業省が2002年7月に発表した”燃料電池実用化・普及に向けた取り組みの現状”によると、システム効率:40%(HHV、受電端)以上、総合効率:80%(HHV)、体積150L/kW以下、耐久性:4万時間以上、システム価格:30万円/台以下等であり、普及時期の目標は2010年以降とされている。
これに対して、メーカーが掲げている当面の目標は、システム効率:32%(HHV、インバータ効率:90%、補機効率90%として)、総合効率:70%(HHV)、耐久性:10年(4万時間)、システム価格:30万~50万円/kW。

となっており、以外にも2年後には導入段階とされているのです。この数字はWEBで公開されている燃料電池プロジェクトチーム(第1回会合) 配付資料の”燃料電池実用化・普及に向けた取り組みの現状(経済産業省)”からも確認することができます。また追加的なシステムコストについても、

燃料電池メーカーは、当面消費者が実際に支払うであろう1kW級固体高分子型燃料電池コージェネレーション機器の代金は、50万円が限度であると予想している。現在給湯器の価格は20万円ないし30万円であるが、この差額を光熱費の節約分で償却する期間を5年程度とするのが理想的とされている。1年間に節約できる光熱費が、割引料金を利用して4万円とすれば、給湯器の値段が30万円としてその差額20万円は5年間で償却できることになる。もし政府による補助制度が導入され、仮に政府が燃料電池の値段の半額を負担することになれば、固体高分子型燃料電池コージェネレーションプラントの正味の販売価格を100万円程度にまで下げることが、市場参入のための最低条件となる。
(中略)
このコストダウンについての見通しは、各社によって微妙に異なっている。メーカーによっては、2005年に1台100万円までコストを下げるのは絶対に無理とみているし、300万円まで下げられるかどうかが現実的な予想とみるメーカーも存在する。メーカー各社が燃料電池自動車用固体高分子形燃料電池の価格を気にするのは、自動車用燃料電池の量産効果を家庭用に活かせる可能性があるからである。

このように、現実的にシステムの償却方法、期間まで想定した目標がたてられているわけです。最新のメーカー各社のニュースを調べてみても、

松下、家庭用燃料電池コージェネレーションシステムを2004年度に商用化へ(PCWeb)

松下電器産業は、新たに、家庭用燃料電池コージェネレーションシステムを開発した。発電効率は35%で、静音性能を向上させている。2004年度に市場に投入する意向で、6月1日から、同社内の研究施設「くらし研究所 LivLa」で、商品化に向けて、最終的なフィールド実験を開始する予定だ。



小規模用1kw級固体酸化物型燃料電池(SOFC)世界最高レベルの発電効率を達成(発表日: 2003年12月18日)

京セラ株式会社(社長:西口 泰夫)は、次世代の小規模用分散型発電として期待されている、1kw級固体酸化物型燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)において、約780℃という低温作動(注1)で、世界最高レベルである54%(注2)の発電効率を達成いたしました。これは、永年培ってきた当社のファインセラミック技術を活かした独自構造のセルの開発と、排熱を加熱源として無駄なく利用できる特殊構造の発電モジュールを開発したことなどによるものです。



家庭用小型コージェネレーション(熱電併給)ユニットのモニターテストを開始 (Hondaプレスリリース 2002/7/18)

コージェネレーションユニット専用に新開発した世界最小※1のガスエンジン「GE160V」と、Honda独創の正弦波インバーター技術を採用した小型軽量の発電システムを効率的にレイアウトし、家庭用での設置に適した小型化を実現した。また、一戸建て住宅において1日10時間程度の稼動を想定し、毎時約3kWの熱出力、毎時1kWの発電をすることにより、総合エネルギー効率85%を実現した。
都市ガス各社と給湯機メーカーが共同開発した排熱利用の給湯暖房システムと組み合わせ、一般家庭での光熱費が年間約4万円節約できるシステムとなっている。またCO2排出量も20%程度の低減効果が期待できる


と、かなり前記の目標を意識した開発が進められているのが分かります。「水素エコノミー」内で紹介された企業も世界初のポータブル燃料発電機を発表しています。
The AirGen™ fuel cell generator


カナダのブリティッシュコロンビア州バーナビーにあるバラード・パワー・システムズ社と、ニューヨーク州レイサムにあるプラグパワー社はいずれも、定置型の燃料電池発電ユニットを企業や家庭に普及させるための大規模なマーケティング計画を開始している。出力は、家庭用ユニットで1~15キロワット、事業用ユニットで60~250キロワットある。プラグパワーはゼネラルエレクトリック社と提携していて、2002年後半には家庭用ユニット数千台を販売する。

身近な家庭内でもエネルギーウェブに接続されるのは、このようにもう数年以内のようです。

■書籍「水素エコノミー」に関する記事
- 水素エコノミー(ジェレミー・レフキン著)を読んで
-
熱力学から考える、人間と経済のエネルギー消費
- 食卓の食べ物は、石油の匂い。近代農業のエネルギー効率と都市
- 水素エコノミーは「脱炭素化」という技術発展の最終目標
- 自然エネルギーの貯蔵、流通インフラとしての水素
- 2005年には、家庭が燃料電池でエネルギーウェブにつながる
- 次世代エネルギー車の、柔軟で環境適応するエネルギー制御システム
- 自律・分散・協調によるウェブ化。脱中央集権を超えた予測不可能な変化
- 自動車と住居は、WEBサービスでエネルギーを相互流通させる

Posted by jkanekomt at 2004年01月06日 21:50 | trackBack



Comments

 こんな記事を見つけました。
 エネルギーの空中採取可能? 電磁波蓄える夢の宝箱開発
  http://www.asahi.com/science/update/0107/001.html
 
 専門家ではないので、良く解かりませんでしたが、時代も変わりましたね・・・
 

Posted by: BLOGKID at 2004年01月09日 12:09

記事内の

>内部にとどまる時間1千万分の1秒は、現在のスーパーコンピューターで数万回計算ができる時間に相当。データ保持の時間としては十分長く、コンピューターへの応用も期待できるという。

なんだか、微小すぎて、すごい話ですね~

Posted by: Jun Kaneko at 2004年01月09日 21:36
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