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2004年02月27日

GoogleのAdSense広告戦略は、新市場型破壊による”イノベーションの解”か?

Googleはなぜ革新的なのか?IPOを控えてGoogle談義が花盛りのなか、幾つかの記事を読んでいると、クリステンセン氏の新著「イノベーションの解」で提起されている、”新市場型破壊”のパターンに、Googleが見事に一致するような気がしてきました。

Yahoo!などの大手ポータルサイトが、なぜ当初はGoogleをパートナーとしていたのに、ここに来て急にGoogleと決別して、検索エンジンを自社開発したり、Overtureの買収をおこなったりしているのか。逆に言うと、なぜ初期の段階ではYahoo!は検索エンジンに、Googleを採用するという判断を下したのか。
GoogleのAdWords、AdSense広告がなぜこれほどまでに急速に普及し始めたのか。この辺りの疑問を読み解くために、「イノベーションの解」の”無消費を市場にする”、”新市場型破壊のパターン”といったロジックが、非常に有効なアプローチとなるような気がします。

まず、当初はYahoo!とGoogleの提携がなぜなりたったのか、という点に関しては、Joi Itoさんの以下の記事がヒントとなります。(引用部分は、英語の原文から要約)

Seven years in the search business(Joi Ito's Web)

インターネット広告は当初、既存のメディアのシステムになぞらえて、トップページはいくら、ページのこの場所だといくら、というような値段付けをされていた。ユーザーがどのような情報を探しているかを考慮したターゲット広告、ページビューをもとにした値付けは、既存の広告主に受け入れられなかった。また、検索機能を重視するのではなく、既存のメディアのコンテンツを流用するような”ポータル・サイト志向”も強かった。

確かに、当時(7年前)を振り返ると”ポータル戦略”が花盛りで、Yahoo!を初めとして、MSN、国内の大手検索サイト、ISPのホームページは、「いかに既存のメディアのように華やかさを出せるか」ということを競っていたころでした。その後、Googleが登場した際にも、Googleのきわめてシンプルなトップページは、そういった”メジャーなポータル”からしてみれば、競争相手にはならない、地味でローエンドなサイトとみなされていたのかもしれません。
つまり、ユーザーは華やかなポータルに魅了されてアクセスしてくるのであり、華やかなトップページで高い広告料金をとることができる。したがって、検索のような地味な機能は、外部の提携先にアウトソースすることで、自社はより付加価値の高いビジネス領域(ポータル機能の拡充)に集中することができる。これは、ビジネス的な判断として(当時は)妥当といえるでしょう。
しかしこの判断には、「イノベーションの解」で”コアコンピタンスとROA(資産収益率)最大化のデス・スパイラル”と評されるワナが潜んでいた可能性があります。ポータルサイトのコアコンピタンス(=コンテンツページの広告収入)に投資を集約し、ローエンド(=一般サイトの検索)を切り捨てることで、短期的には収益の向上を果たせるものの、切り捨てた市場にこそ、技術革新の可能性があったわけです。
Googleは切り捨てられたローエンド市場(=一般サイトの検索)において、革新的な技術を導入することにより、いままで顕在化していなかった大きな利益を独占するようになります。この部分は、WiredのGoogle特集の中で、Googleの広告ビジネスについて書かれている以下の記事が参考になりました。(引用文は、英語の原文を要約)

The Complete Guide to Googlemania!(Wired)

It's an Ad, Ad, Ad, Ad World
Forget the search business. Today Google's all about advertising.
By Josh McHugh

Forrester ResearchによればGoogleのAdSense、AdWords広告による収入は600億円($600 million)に達したという。Google検索ページでの検索キーワードに基づいた広告表示では、15%程度のクリックスルー・レートがあるといい、これは通常のバナー広告の10倍以上のクリック・レート。
AdSenseでは”キーワード”をもとにした広告の入札、検索エンジンのアルゴリズムを利用した”最適なページへの広告掲載”によって、初めて「非常に特化したコンテンツを探しているユーザー(well-described and narrowly focused consumers)」へ広告を配信することを可能にした。これは既存の広告業界が切望していたピンポイント広告だが、ニッチなコンテンツをニッチなユーザー(micro-audiences)向けに編集して、広告付きで配信することは、既存のメディアの仕組みではコスト的にもシステム的にも難しかった。
ホームページの内容と関係性を把握するPageRankのアルゴリズムによって、どのページにどの広告を表示するのかを決定するという、かつては人が行っていた作業を自動化することで、ブログなどの一般の多くのサイトでも手軽に、効果的な広告を設置することが可能になった。
ブログなどを読んでいるユーザーは、”すぐに買いたい何か”を探している状態ではないので、AdWordsのような15%ものクリックスルー・レートは無いものの、既存の(サイトのオーナーにとっては、選んで掲載するのに非常に手間を必要とする)バナー広告よりも、はるかに高いクリック率を達成している。サイトのオーナーにとっては、最低限の投資、手間で最大限の効果を得られるわけで、すでに150,000サイトがAdSenseに登録している。

このGoogleの広告戦略は、GoogleのAdSense導入例でも具体的にメリットとしてPRされています。

Google AdSense 導入例

Google AdSense を活用し、広告収入を 2 倍にした Greenwich 2000 社の例

「AdSense は営業に費用をかけることなく収入が得られる点も非常に魅力的です。今では多くの広告スペースを AdSense の広告に割り当てており、その収入は全く補足的なものですが既にかなりの金額になっています。結果的に、ユーザーにはさらに便利に利用してもらえるようになったというメリットもあります。わずかな収入のために必要だった、バナー、ポップアップ、フレームなどを使った広告を掲載しなくて済むようになり、ウェブ サイトへのアクセス数は 2 倍になりました」。


Google AdSense を活用し、安定した収入を手に入れた WiFinder 社の例

同社にはオンライン広告セールス担当の従業員がいないため、広告掲載を希望する企業があった場合にだけ広告収入が得られるという状態でした。「広告主からの広告料金は不定期で、頼りにできる安定した広告収入はありませんでした」と、Rafar は語ります。
Rafer と、WiFinder の CEO である Oren Michels は、Google AdSense のプログラムを知り、ページのコンテンツに関連した広告を掲載して、広告収入を得る新しい方法があることに気付きました。AdSense は、WiFinder のようなサービスには特に効果的です。「無線ホットスポットを頻繁に検索するユーザーは莫大な数にのぼります。Google AdSense では地域に対応した広告が配信されるので、ユーザーにとっても非常に便利です。」と Rafer は言っています。

このようなGoogleの広告市場にたいするイノベーション、ビジネス展開を把握したうえで、「イノベーションの解」を参照してみます。

イノベーションの解
第四章 自社製品にとっての最高の顧客とは

P127
だがもう一つの無消費は、用事を片付けたいが、市販製品が高すぎたり、複雑すぎたりするため、自力で出来ずにいるときに発生する。そのため、彼らは不便で高くつく方法、または満足いかない方法でそれを片付けることに甘んじるしかない。このタイプの無消費が、成長機会をもたらすのだ。新市場型破壊は、金やスキルを持たなかった大勢の人が、製品を購入し、利用することで、自力で用事をこなせるようにするイノベーションである。これから先、「無消費者」と「無消費」という用語を、この種の状況を指すものとして用いる。つまり、用事を片付ける必要があるが、望ましい解決策がこれまで手の届かなかったところにあった状態だ。このような新市場を標的とするイノベーターを、「無消費と対抗している」ということもある。

(中略)

無消費から成長をひきだす:まとめ P137

これらの歴史を基に、新市場型破壊のパターンを構成する、四つの要素を抽出してみよう。このパターンは、破壊的イノベーションにとって理想的な顧客や用途市場を探すためのテンプレートとして使える。また、新たな市場成長を生むことが実証済みのこのパターンを基に、未完成のアイデアを、このパターンに適合する事業計画として形成することもできる。この四つの要素は、次のようになる。

1. 標的顧客はある用事を片づけようとしているが、金やスキルを持たないため、解決策を手に入れられずにいる。

2. このような顧客は、破壊的製品をまったく何も持たない状態と比較する。そのため、本来のバリューネットワークのなかで、高いスキルを持つ人々に高い価格で販売されている製品ほど性能が良くなくても、喜んで購入する。こうした新市場顧客を喜ばせるための性能ハードルは、かなり低い。

3. 破壊を実現する技術のなかには、非常に高度なものもある。だが、破壊者はその技術を利用して、誰でも購入し利用できる、シンプルで便利な製品をつくる。製品が新たな成長を生み出すのは、「誰でも使える」からこそだ。金やスキルをそれほど持たない人々でも消費をはじめられるのだ。

4. 破壊的イノベーションは、まったく新しいバリュー・ネットワークを生み出す。新しい顧客は新しいチャネル経由で製品を購入し、それまでと違った場で利用することが多い。

(中略)

このパターンに適合する破壊がなぜ成功するかと言えば、実績ある競合企業はこれが起こっている間中、新興市場への参入者を、自分たちの安泰を脅かす存在として考えないからだ。新しいバリュー・ネットワークの成長は、しばらくは主流市場の需要に影響を与えない。実際、既存企業は一時的にではあるが、破壊のお陰で繁栄する。

どうでしょうか?驚くほど前記のGoogleのケースにあてはまる部分が多いように思われます。ポータル・ビジネスという主流市場の需要に影響を与えない形で、Googleは一般サイトの検索、広告配信という新しいバリューネットワークを着々と築いていった。Yahoo!などのポータルサイトは、(当初は)収益の低い検索システムをGoogleにアウトソースすることで、コアコンピタンスとしてのポータル広告収入の収益率を高めることができた。しかしながら、GoogleがAdWords、AdSenseというイノベーションによって、”今まで広告を配信することができなかった一般サイト”の無消費に対抗して、新しい市場を掘り起こし、新市場型破壊のパターンによって、より多くの付加価値を得ることができる主流のポータル広告市場までをも脅かすようになったと、きれいにあてはめることができます。

これに気づいてYahoo!が一連の、検索エンジンの自社開発、ターゲット検索広告のOverture買収といった戦略を矢継ぎ早に実行に移しているといえるのではないでしょうか。Yahoo!がGoogleに変えて導入しはじめた検索エンジンについては、ClickZの以下の記事で簡単なレビューを読むことができます。(引用文は、英語の原文を要約)

Yahoo!: Birth of a New Machine(ClickZ)

新しく登場したYahooの検索エンジンの検索結果をGoogleと比較すると、メジャーなキーワードだと、ほぼ同じようなサイトが上位に来るが、マイナーなキーワードや、キーワードを組み合わせて検索すると、検索結果は結構異なるよう。検索インデックスの量では、公式には発表していないものの、Googleに遜色ない?
Yahoo!はYahoo!Mailの運用で、スパムメールに対処するノウハウがあるので、検索からのスパムのフィルターでは有利かもしれない。あとは2003年にYahoo!が買収したOvertureをどう活用するか、My Yahoo!と連動したパーソナライズサーチ、RSSの活用などで差が出てくるかもしれない。

検索エンジンをめぐっては、Yahoo!とGoogleの間で検索エンジン特許に関しても激しい競争がおこっているようです。

覇権争いに備え、特許で“武装”する検索エンジン(ITMedia)

検索は長い間、もうけにならない学術研究の1分野と考えられていたが、約2年前、検索結果に取引を左右する力があると認識されるようになってからは、急速にビジネスの主流に発展した。検索エンジン広告は今や、回復の途上にあるインターネットマーケティング分野において、最も急速に成長しているセグメントの1つであり、Yahoo!が昨年84%の増益を達成する後押しとなった。

Yahoo!は、ここ14カ月で行った2件の(InktomiとOvertureの)大型買収を通じて特許を蓄積、特許の宝庫の鍵を握っている。同社CEO(最高経営責任者)のテリー・セメル氏はOverture買収の直後に、特許保有の重要性について次のように話していた。「当社は、アルゴリズム検索とスポンサー付き検索に関するOvertureの優れた知的財産ポートフォリオを技術資産に加えることになる」


他にもこんな試みも。

Yahoo vs Googleサーチ 
GoogleとYahooで同じキーワードを検索した場合の、表示されるサイトの順位に違いを視覚的に表示する。

また同じくClickZ Newsでは、スパムであふれるE-MAILの代わりに、RSSの内容を解析して、RSS内に最適な広告を配信するRssAdsというサンフランシスコのベンチャーを紹介しています。
Is Ad-Supported RSS the Next Big Thing?(ClickZ)

実は「イノベーションの解」はまだ読み途中なので、この他にもGoogleや、あるいはブログ技術に関して考察するための、様々なエッセンスがあるのですが、読み終わってまたの機会にまとめてみたいと思います。

■ 関連記事
- Googleがセマンティック解析を実装?
- A9.comとAlexa, Amazonの検索エンジン戦略はYahoo!をも標的に?
- ブログは金になる?Google AdSense広告のコツ

■ 関連サイト
- Google が最も人気ある検索エンジン - Nielsen//NetRatings 調査 
- 儲かるブログ(のまのしわざ)
- Google News(Blog Kid)
- Google、『パーソナライゼーションは必要ならすぐに追加する』(SEM Research)

Posted by jkanekomt at 2004年02月27日 01:32 | trackBack



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