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2004年03月14日

「風車のある風景」のために越えるべき規制

自然エネルギーを利用した発電事業を、実際に行うために必要なことを知るという意味で「風力発電 マニュアル2003」は、なかなか面白い本でした。実際に風力発電事業を始めることを想定して書かれているので、読み物として面白いわけではないのですが、立地調査、技術検討、ファイナンス、補助金の申請、電力を売る手段など、リアルな情報としての面白さがあります。

その中でも、関連省庁への許認可申請と、補助金の取得、電力会社への売電申し込みなどについては、かなりのページが割かれています。新しい事業として自然エネルギーに取り組むにしても、官庁や大手電力会社など、既存の組織や事業体と密接に関係しないことには、事業をはじめられないことがよく分かります。

風力、太陽光発電などの自然エネルギーを事業として成功させるためには、技術革新による発電コストの低下が必要不可欠です。一方で、持続可能性と環境に対するコストを考えなければ、既存の化石燃料の発電コストは非常に低いため、単純な市場原理だけでは自然エネルギー事業を立ち上げるのはハードルが高いのも事実です。マーケットが成長し、規格化と大量生産によってコストが低下する、そしてさらに自然エネルギーの利用が拡大する、というポジティブ・スパイラルが発生するまでは、先行的な投資や、政策的な助成が必要になってきます。
つまり、自然エネルギー事業の収益構造としても、現状では何らかの形で、既存の組織に依存する必要があります。

新しい自然エネルギー事業と、既存のエネルギー関連組織の間をつなげるものとして、グリーン電力証明システムや、「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」、通称「新エネRPS法」などの制度が設けられました。

グリーン電力証書システムとはどのようなものですか?(日本自然エネルギー株式会社)

グリーン電力証書システムは、自然エネルギーによって発電された電力のもう一つの価値、すなわち省エネルギー(化石燃料削減)・CO2排出削減などといった価値(これを環境付加価値と呼びます)を「グリーン電力証書」という形で具体化することで、企業などのお客さまが自主的な省エネルギー・環境対策のひとつとして利用できるようにするシステムです。

風・水といった資源を持たないお客さまの自然エネルギー利用を可能とするため、契約により国内に発電所を建設し、発電実績を「証書」により証明する日本初のシステムです。40を超える企業・自治体が環境貢献策として採用。CO2排出量取引への応用も注目が集まっています。

こういった制度は、従来からのエネルギー政策の流れとして官庁や、大手電力会社によって制定されていますが、その実行に関しては様々な問題点も指摘されているようです。以下のHotwiredの記事では、かなり厳しく制度的な問題点を指摘しています。

飯田哲也の「エネルギー・デモクラシー」(Hotwired)

2003年度に日本の電力会社が募集した風力発電の「枠」は、合計で33万キロワットであった。日本の現状から見れば大きい数字だが、ドイツが2002年に設置した風力発電の規模の10分の1にすぎない。それ以上に驚くべき事実は、この33万キロワットという枠に対して、応募のあった風力発電を合計すると、なんと204万キロワットにも達するのである。

(中略)

現在の無惨な状況は、何よりも第1に、昨年4月に施行された「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」、通称「新エネRPS法」が原因である。そもそも、はるかに堅実な普及制度を選択することができたにもかかわらず、政府(=経済産業省)が「RPS」という制度を選択したことが失敗の始まりとなった。RPSとは、1990年代後半から欧米を中心に考え方が広がってきた自然エネルギー促進制度の一つで、「Renewable Portfolio Standard」(再生可能エネルギー割当基準)の略称である。電力会社や消費者に対して、目標年次までに電力販売量や電力消費量に占める自然エネルギーの比率を高めるよう目標値を義務づける制度で、その過不足をクレジットのかたちで販売することで、自然エネルギーの設備の有無にかかわらず、すべての電力会社が義務を達成できる仕組みである。しかも、RPSクレジットの取引市場をとおして、自然エネルギーのコストが削減できるという一石二鳥の効果が、当初のRPSのウリであった。そのため一時期は、官僚や経済学者に一種のユーフォリアのような期待を生み出したのだが、後述するように、先行する英国で制度の欠陥のために混乱が生じるなど、現実にはさまざまな制度設計上の困難に直面している上に、制度そのものの持つ国家管理的な性格もあって、欧州でも日本でも徐々に懐疑的な見方が広がってきている。

制度選択の失敗に加えて、日本(の経済産業省)は制度設計でも致命的なミスを犯している。官僚特有のたてわり性向のために、電力自由化政策や地球温暖化政策との調和を試みた形跡すらない。不透明極まりないプロセスのために、電力会社による水面下での政治圧力を受けて、2010年までにわずか1%増という「小さすぎる目標値」に抑えられたばかりか、その「小さすぎる目標値」すら5年先まで先送りするという姑息な策が弄されている。同じ期間に、ほぼゼロから10%へと拡大を目指すことを政治的に決めたドイツや英国と比較するととても「目標値」とはいえず、むしろ「抑制値」と呼ぶべきであろうし、事実、そのように機能している。

(中略)

これに関連して、官僚主導の政策決定プロセスは、公共政策の観点から見て、本来の民主的な手続きや市民参加を欠いているという問題を孕んでいるだけでなく、新エネRPS法での目標値の歪みなどでまさに立証されたとおり、その密室的な手続きがゆえに、古典的な政治介入によって政策が「歪められる」懸念がある。経済産業省が、議員立法で成立の可能性の高かった「自然エネルギー促進法」の成立を遮り、それに代えて新エネRPS法を成立させた動機は、自然エネルギーの普及という「公共性」を真摯に追求したというよりも、官僚組織としての「私的利益」の追求に他ならない。その結果として、自然エネルギーの促進そのものの普及が滞り、混乱に陥っている現状を考えれば、「公共性」に反していることは明らかだろう。

 加えて、「知識生産の質」の問題を指摘しておきたい。新たな公共政策の導入に際しては、本来であれば、公共性の高い複数の目的をベストパフォーマンスで達成しうる、慎重を期した制度選択と設計が求められる。しかしながら、そのような配慮をした痕跡はなく、自己利益と業界調整を閉鎖的に行う官僚の体質や手続きでは、何よりも公共政策に求められる「知識生産の質」において著しく劣っている。

また、実際に自然エネルギー事業を行っている事業者からも、以下のような意見書が出されています。

悪法RPS法・運用開始(浅川太陽光発電所)

自然エネルギー発電の広がりを押さえ、原子力発電を押し進めるために「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」、RPS法が平成15年4月1日より運用が開始されRPS法により、、自然エネルギー発電、イジメの法律が始動し始めました。
 手始めとして、新エネルギーで発電した電気の買取価格を原子力発電所の発電単価なみに低く押さえ、自然エネルギー利用発電を押さえながら、原子力発電に大きく切り替えようと、自然エネルギー発電からの電力買取価格を低く設定し、自然エネルギー発電の台頭を押さえ込みを始めました。

実際にエネルギー産業にかかわっているわけではないので、実情については意見する立場にはありませんが、「風力発電 マニュアル2003」などを読んでも、複数の省庁にまたがる許認可申請が非常に複雑で、かつ省庁や大手電力会社の定める制度に、事業収益が大きな影響をうけることは読み取れます。

これは何もエネルギー政策に関することだけではなく、年金改革や新証券税制(何度読んでも理解できません)など生活に身近な領域でも、目的が不明瞭で、やたらと複雑な制度が、どんどん積みあがっているような気もします。

なんだか悶々とした文章で終わるのも何なので、もう一冊、書籍のご紹介。風に関する情報を集めたホームページ「風探偵団」も運営されている野村卓史 日本大学教授の著作。「風を受け、ゆったり回る風車は美しい!」と、日本中の風車のある風景を撮影された写真集+風力発電入門です。地図を片手に風車を探して日本の奥地を旅する、なんていうのも一風変わった旅行でいいかもしれませんね。

風車のある風景―風力発電を見に行こう
野村 卓史 (著)
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Posted by jkanekomt at 2004年03月14日 20:29 | trackBack



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