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2004年03月27日

検索技術バリューチェーンをめぐる攻防 自社開発のGoogleと、外部リソース活用のYahoo!

GoogleのAdSense広告戦略は、新市場型破壊による”イノベーションの解”か?を書いてから、しばらくたってしまいましが、Googleをテーマにクリステンセンの「イノベーションの解」を引き続きお勉強。

検索市場は、GoogleとYahoo!がガチンコ対決、マイクロソフトが水面下で不気味な動きと、今まさに戦国状態です。マイクロソフトの方向性はまだベールに包まれているのでおいておくとして、GoogleとYahoo!のとるアプローチには微妙な違いがあります。Googleが自社内で検索技術を開発しつつGoogle Labsから徐々に展開しているのにたいし、Yahoo!はInktomi、Overtureの大型買収を初め、Quingoのようなベンチャー企業の技術を採用したり、積極的に外部のリソースを取り組むことで自社の検索技術を進化させています。

一方で、続々と登場する検索ベンチャーは、必ずしもGoogleを追い越すことが目的ではなく、パーソナライズやローカルサーチなど、既存の検索に組み合わせて、検索結果をブラッシュアップする、いってみれば”検索技術のパーツ”の開発に主眼をおいている企業が多いようです。

どうやら検索サービスは、PageRankなどの基本的な検索アルゴリズムや、検索可能なWEBサイトの数(インデックス)の大きさを競う段階から、様々な検索関連技術を統合した”検索ソリューション”を競う時代に突入しつつあるようです。
ユーザーの欲しい情報を見つける、という目的を実現するためには、様々な要素技術を組み合わせることが必要になってきており、一回の検索をするだけでも、様々な企業の提供する技術を使うことになる、検索ソリューションのバリューチェーンが形づくられつつあるのでしょうか。バリューチェーンには当然、検索サービスのビジネスモデルであるターゲット広告技術も含まれでしょう。

Googleが成功しつつあり、Yahoo!が大金を投じてサービス開発を進める環境では、イノベーション型のベンチャー企業が成功する余地はないのでしょうか?クリステンセン氏の”イノベーションの解”によれば、”バリューを手にするチャンスは十分にある”ということになります。検索サービスがコモディティー化することによって、ユーザーに近い”検索サイト”を運営するには、莫大な投資と、コスト低下圧力にさらされることになりますが、これは同時に、検索バリューチェーンの下方に位置する、”検索技術のパーツ”部分での脱コモディティー化と、バリューシフトが起きる可能性があるというのが氏の指摘です。

イノベーションの解 P-183

だが希望はある。われわれがコモディティ化に関する研究から得た最も興味深い洞察の一つは、コモディティ化がバリューチェーンのどこかで作用しているときは、必ず脱コモディティ化という補完的なプロセスがバリューチェーンの別の場所で作用している、ということだ。コモディティ化が差別化を阻むことで企業の収益力を破壊するのに対して、脱コモディティ化は潜在的に莫大な富を創出し獲得するチャンスを生み出すのである。この二つのプロセスが相互に補完的だということは、産業に新しい破壊の波が次々と押し寄せるなか、差別化能力がバリューチェーンのなかを絶えず移動することを意味する。そしてこのとき、バリューチェーンのなかの、性能がまだ「十分でない」地点に位置を定める企業が、利益を手にするのだ。

検索サービスが、すでにコモディティー化してしまったかどうかは、議論の余地はあるかもしれません。しかしながら、少なくともGoogleやYahoo!はコモディティー化が起きることを視野に入れた上で、先行的な技術開発、投資をおこなっていることは間違いないでしょう。
前回の、Googleにおけるイノベーションの解としてのAdSenseを考えた過程では、GoogleがいかにしてAdSenseというテキストベース、一般サイト向けというローエンドで低コストな技術で、より付加価値の高いバナー広告などの上位市場を破壊したかを見ました。しかしながら、破壊者たるGoogleも上位市場を食いつぶすにつれて、Yahoo!などの一度はビジネスを破壊されつつも、急速な企業買収などによって、同じようなローエンド破壊型の技術を身に付けた企業との競争にさらされているのが現状ではないでしょうか。
イノベーションの解によれば、このような競争においては、ユーザーの要求に迅速にこたえる、スピードと応答性が求められるということになります。

イノベーションの解 P-167

1. 技術改良のペースは顧客の利用能力を上回るため、ある時点では機能性や信頼性が十分でない製品も、やがては顧客の利用できるものを上回るようになる。

2. その結果、企業はそれまでとは異なる方法で競争することを強いられる。つまり、競争基盤が変化するのだ。顧客が機能性や信頼性の向上に対して割増価格を支払う意志を失うにつれ、今度は顧客が欲しいと思う通りのものを必要なときに与える能力を高める供給業者が、魅力ある利益率を得るようになる。

3. 企業は競争圧力により、スピードと応答性をできる限り高めることを強いられると、相互依存型の独自仕様の製品アーキテクチャを、モジュール型に進化させることによって、この問題を解決する。

4. モジュール方式を通じて産業の解体が実現し、一部の特定型企業が、かつて産業を支配していた統合型企業を打倒する。統合はある時点では競争上不可欠だが、後には競争上の障害となるのだ。

(中略)

P-189
モジュール型破壊者にとって、健全な利益を確保する唯一の方法は、低コストのビジネスモデルをできるだけ速く上位市場に持ち込み、高コストの独自製品メーカーと最前線で競争し続けることだ。モジュール型製品の組立業者であれば、性能を決定する構成部品とサブシステムのなかで最高のものを選び、いち早く製品に組み込む。組立業者は再び利益の得られる上位市場へ急ぐために、選り抜きの性能決定部品を必要とする。そして彼らが性能決定部品の向上を求める結果、こうした部品の供給会社が、破壊的イノベーションのグラフの「十分でない」領域に押し戻されてしまうのである。

検索ソリューションを構成する”検索技術のパーツ”が、ここでいう「十分でない」領域に位置づけられるのであれば、勃興する検索技術ベンチャーは、バリューチェーンのまさにこの部分を狙っているとも考えられます。
検索技術ベンチャーに詳しく解説している記事を読むと、やはりパーツとしての検索技術にフォーカスしていることが良く分かります。

いずれGoogleを超える? 躍進する新興検索企業(ITmedia)


■ 検索エンジン広告技術の改良

Quigo
Quigoの技術はGoogleの広告エンジンと似ており、Webページの文脈や意味を認識し、よりターゲットを絞り込んだ広告を提供する。Quigoは既に、Overtureという有名顧客を1社獲得している。これは、Overtureが従来の人間に依存したシステムとは反対に、広告配信技術の利用を増やそうとしている兆候だ。

Industry Brains
Industry Brainsのサービスでは、例えばWeb出版社はハイテク関連の広告主にプレミア料金を課すことができ、広告主はビジターからの応答率が高まると同社CEOのエリック・マットリック氏は説明している。
「すべてのクリックが同じ価値を持つわけではない。このサービスでは、広告主はクリックの価値を薄めずに済む。100の検索キーワードに入札する代わりに、1カ所にログインして、各サイトに個別に入札できる」(同氏)
マットリック氏は、Industry Brainsの事業がターゲットにしているのは、今年40億ドル規模に上ると見られる検索エンジン広告業界ではないと話す。むしろ、狙っているのは1億ドル規模のプレミアムプライベートレーベル業界で、売上は毎月20~30%のペースで伸びているという。

■ 検索結果のパーソナライズ

Mooter
Mooterでは神経回路を模した数学アルゴリズムを使って、例えば「旅行 オーストラリア」を検索した2人のユーザーをより良く理解し、違いを識別する。このユーザーはバックパック旅行のデータを求めているのか、それとも豪華なゴルフツアーのデータを欲しているのだろうか?

Eurekster
新たに立ち上げられた検索エンジンEureksterは、ソーシャルネットワーキングを活用して、よりパーソナルな性質の検索結果を提供している。

Dipsie
同社の検索技術はまだ披露されていないが、CEOのジェイソン・ウィーナー氏は、同社はデータベースに格納されている数十億のWeb文書などの、「ディープWeb」をインデックス化していると語る。

■ 検索結果の整理

Vivisimo
同社は先月、eBayにオークション情報を分類する検索ツールを導入した。また同月には、オンラインディスカウントサイトのFatWalletから契約を獲得。FatWalletは、自社サイトに表示されるGoogleの検索結果を、Vivisimoの技術を使って分類する。

Groxis
トピック別に検索結果を整理するGoogle用プラグインを開発

■ 地域を限定したローカルサーチ

Whereonearth.com
Whereonearth.comは、WebのIPアドレスをピンポイントで特定するシステム

Citysearch.com
飲食店、商店、娯楽施設の「地域番組表」のようなものを見つける手段

記事の最後には「検索市場の垂直分野のチャンスは大きい」というJupiterのメックラー氏のコメントもあります。開発した検索技術パーツをYahoo!などに契約で提供することができれば、大きな利益が上げられるでしょうし、あるいはイノベーションごと売却という手もあるのかもしれません。
一方のGoogleはというと、ベストな人材によるベストなイノベーションを目指すとでもいうのか、自社内においてイノベーションを活発化させるための体制作りに余念がないようです。

Google躍進の秘密は社内アイデアリストにあり?(ITmedia)

Googleの共同創設者ラリー・ペイジ氏(31)とセルゲイ・ブリン氏は2月28日、カリフォルニア州モンテレーで開催されたテクノロジーカンファレンスで、従業員には各自のアイデアとプロジェクトを追及するよう奨励していると語った。同社では「Google Top 100」と呼ばれる社内向けのリストを作成し、その成果を追っているという。

「Googleで働いているスタッフは、自分の時間の20%を『自分自身が一番いいと思うこと』に費やしてかまわない」とペイジ氏は語っている。

同氏によれば、「Google News」のほか、最近始動した出会い系ネットワークサービス「Orkut」も、このGoogle Top 100リストから誕生したサービスだという

Google Top 100リストから有望なものは、Google Labsという形で、一般にテスト公開されます。声によるボイスサーチを初め、様々なトライアルがされていて、Google Labsを晴れて”卒業”した機能がGoogle Localのようにサービスとして提供されています
ここでも恐るべしGoogle!といったところでしょうか。こと検索に関してはバリューチェーンはすべてものにする、という意気込みも伝わってきます。

Yahoo!の外部リソースを積極的に取り組むアプローチと、Googleの自社開発重視は、企業規模による違いで、どちらが優れているということでは無いのかもしれません。また現在Googleの開発しているGoogle Localや、Orkutをベースにしたパーソナライゼーションなどのすべてが、検索ソリューションのパーツとして機能するのかどうか、結果が見えてくるのは、まだまだこれからかもしれません。
しかしながら、インターネットから情報を探し出す、というユーザーの目的にフォーカスし、新しいイノベーションを社内でつぎつぎと生み出すGoogleの企業カルチャーは、やはり際立っているように思えます。

イノベーションの解 P-201

コア・コンピタンスは、多くの経営者が用いる用法においては、危険なまでに内向き志向の概念だ。競争力は、単に得意だと自負する業務を行うことではなく、むしろ顧客が高く評価する業務を行うことから生まれる。そして、競争基盤が変化しても競争力を保ち続けるためには、過去に栄光をもたらしたものにしがみつく代わりに、新しい物事を学習する意欲と能力を持つことが、絶対的に必要なのである。既存企業にとっての挑戦は、航海の途中で船を建て直すことだ。船から厚板を一枚一枚はぎ取って船外に投げ捨て、誰かがその破片を使って新しい、速いボートをつくるに任せることではないのだ。

やたらと長いエントリーになってしまいましたが、イノベーションの解のような一線の研究を、実際のビジネスに即して理解するという意味では、開発の過程がオープンになっているインターネット業界は、やはり面白いですね~

またGoogle Localと、これに対抗するYahoo Localのローカル検索についてはエッセンシャル・サーチエンジンさんの「GoogleもLocal Searchを開始」が詳しいです。

米Google,地域の情報を検索できる新サービス「Google Local」を開始(ITPro)

Google.comの入力フィールドに,検索したいキーワードと地名や郵便番号などを入力すると,その地域の情報が検索結果の上位に自動的に表示される。コンパスのアイコンが表示されている場合は,そのアイコンをクリックして,Google Localの検索結果ページに飛ぶことができる。
例えば,ある地域のイタリアン・レストランを検索すると,Google Localの検索結果には,その地域にあるイタリアン・レストランの一覧と,電話番号,住所,関連WWWサイト,レストラン情報などが表示される。一覧の中からレストランを選んでクリックすると,その店舗の所在地を示す地図のほか,関連WWWサイトのリンク一覧を表示したページが現れる。また,検索対象地域の半径を1.6~72kmまで指定できる。

クリステンセンの、コモディティ化と脱コモディティ化に関してはSW's memoさんの記事「クリステンセン、オープンソースを語る」も興味深いです。

■関連記事
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Posted by jkanekomt at 2004年03月27日 01:07 | trackBack



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