自動車と住居は、WEBサービスでエネルギーを相互流通させる

ハイブリッド車や、燃料電池車などの次世代エネルギー車は、単純に動力源をガソリンエンジンから変更するだけでなく、同時に車全体をシステムと見立てて柔軟で環境適応するエネルギー制御の仕組みが重要、かつ競争力の源泉にもなることを知りました。このエネルギー制御システムを、自動車から住居に技術展開する、あるいは自動車と住居をエネルギー生産・消費の一体化した一つのシステムとして最適化することも「水素エコノミー(ジェレミー・レフキン著)」の中では提案されています。
世界の一次エネルギーの二割以上を燃料にして、二酸化炭素排出量の17%を占める交通機関を、次世代のクリーンなエネルギーで動かすと同時に、一日の97%は停車しているだけの自動車を、電力を供給するための発電機として活用するというものです。さらに燃料の水素にしても、住居や商業システムに設置された定置型の燃料電池ユニットの改質装置を利用して水素を生成、燃料電池車に供給するというアイデアも紹介されています。時間と場所によって、エネルギー制御システムに接続する自動車、住居などがエネルギーの生産・蓄積・消費の役割をお互いに分担する、あるいは役割の交代をすることで、動的に双方向なエネルギー流通を実現しようというものです。
エネルギーを水素というかたちにかえることで、自動車がエネルギーの受信も送信も行う、ということは自律・分散・協調するエネルギーウェブという概念にまさに一致するように思えます。
街中を走る自動車は、CPUを搭載した自律エネルギー制御システムとみることもできるわけで、自動車の”マシンパワー”を相互に接続する際には、単にエネルギーをやりとりするだけでなく、組み込まれたプログラムがメッセージングを交わしながらWEBサービスによって最適な動作をするように設計することも可能なように思われます。XMLやWEBサービスのような今、インターネットで開発・利用されている技術も応用可能かもしれませんね。

水素エコノミー(ジェレミー・レフキン著)
第八章 水素エコノミーの夜明け P276~282

「燃料電池によって、百年続いた内燃機関の世の中はついに幕を閉じると確信している」(フォードモーター社会長 ビル・フォード)

水素燃料電池車への移行は、計り知れぬほど重大な影響をもたらす。現在、乗用車とする自動車は世界で7億5千万台も走っており、その数は今後25年で倍増すると見られている。どの車もまだ化石燃料で走っている。アメリカだけを見ると、石油の年間消費量の54パーセントは交通機関に使われている。世界では、一次エネルギーの二割以上が交通機関の燃料に消えている。そのうえ、国際エネルギー機関の推定によると、世界の二酸化炭素排出量の17パーセントは道路交通で石油がもやされることが原因だそうだ。
(中略)
新しい水素燃料電池時代には、自動車自体が出力20キロワットの「動く発電所」となるのだ。一般に乗用車は、一日の96パーセントは駐車している。その時間を利用して家庭や、オフィスや、商業用の双方向電力ネットワークにつなげば、電力系統に高品質電力を提供することができる。売電で得た収入で、車のリースや購入の費用をまかなうこともできる。車で発電した電力を電力系統に戻して売るドライバーが何割かいれば、アメリカ国内の発電所はあらかた不要になる。水素燃料電池車が2億台あれば、その発電量量は国内の全発電所の4倍にもなるからだ。
(中略)
また委員会(注:米国エネルギー省 水素政策審議委員会)は、当初はオンサイト用の小型水素製造装置、つまり天然ガス・パイプラインにつないだ水蒸気改質器か電力系統に接続した電解装置を、各地のガソリンスタンドに設置して水素を製造・貯蔵できるという、トーマスたちと同じ見解を示している。燃料電池車の台数が増えたら、大規模な集中型プラントを建設して水素ガス・パイプラインで燃料ステーションに水素を送るか、小型のオンサイト装置で水素を製造するかして、引き続き消費者の需要に応じていけばいい、と委員会は提言している。
1999年1月13日、ドイツは他のヨーロッパ諸国に先駆けて、ハンブルグ市に商業用の水素補給ステーションを開設した。オープニングセレモニーで市長のオルトヴィン・ルンデは、水素燃料自動車によってハンブルグのような都市の生活の質がどれほど向上するか考えてほしい、と市民によびかけ、感慨を込めてこう語った。

通りは静かになります。車が走り過ぎても、タイヤの音がして一陣の風を感じるだけです。排気管からの騒音はありません。街の空気はきれいになります。排気ガスがほとんど出ないからです。歩道を散策する人々が顔をしかめることも、旅行者が往来の悪臭を嫌ってカフェに逃げ込むこともありません。夕暮れどきの一杯を屋外で楽しめるようになるのです。

ロッキーマウンテン研究所のエイモリー・B・ロヴィンズとブレット・D・ウィリアムズは、燃料電池用の水素を確保するのに、少しちがったアプローチを提案している。水素燃料電池車への移行の初期段階では、家庭やオフィスの定置型燃料電池ユニットの改質装置から水素を得るというものだ。自家用の燃料電池ユニットを設置する建物の数は、今後数年間でますます増える。だから、オフピークで発電能力に余裕がある時間に、家庭やオフィスの燃料電池設備を使って水素を製造すればいい、とふたりは言う。

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- 水素エコノミー(ジェレミー・レフキン著)を読んで
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熱力学から考える、人間と経済のエネルギー消費
- 食卓の食べ物は、石油の匂い。近代農業のエネルギー効率と都市
- 水素エコノミーは「脱炭素化」という技術発展の最終目標
- 自然エネルギーの貯蔵、流通インフラとしての水素
- 2005年には、家庭が燃料電池でエネルギーウェブにつながる
- 次世代エネルギー車の、柔軟で環境適応するエネルギー制御システム
- 自律・分散・協調によるウェブ化。脱中央集権を超えた予測不可能な変化
- 自動車と住居は、WEBサービスでエネルギーを相互流通させる