水素社会にむけたEU・米国・日本の公共インフラとしての取り組み

先日のワールド・ビジネス・サテライトで、ヨーロッパでは燃料電池バスが都市の公共交通機関として運行されていると紹介されていました。書籍「燃料電池ビジネスの本命”住宅市場”を狙え!」によれば、このEUの公共交通機関への燃料電池バスの導入は、将来的な水素エコノミー社会に向けた大きなプランの一部のようです。

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ヨーロッパの新しいバス:ダイムラー・クライスラーが世界初となる量産化に向けた燃料電池バスを発表(プレスリリース)

この史上初のテストの実施方法は、従来とはまったく異なっています。ノルウェーの厳寒下や、スペインの夏の猛暑、平地、それにシュツットガルトのような丘陵地で、性能が試されることになるからです。燃料電池が排ガスを出さないことは、都市の交通では大きな利点となります。

メルセデス・ベンツ・シターロ 燃料電池バス

全長12mのメルセデス・ベンツ・シターロ燃料電池バスは航続距離約200km、定員は運行事業者の装備内容により異なりますが、最大70人です。燃料電池ユニット(出力200kW以上)と圧縮水素タンク(350バール)はルーフに設置されています。最高速度は80km/hです。電動モーター、トランスミッション、プロペラシャフトおよび機械式リアーアクスルは、いずれもバスの後部に置いています。3ヶ所の段差のない入口、リアーエンドまでの全面低床、すぐれた静粛性により、地域の公共交通機関としてすぐれた居住性を実現します。

2000年3月に開始されたECTOS(Ecological City Transport System)は、アムステルダム、バルセロナ、ハンブルグ、ロンドン、ルクセンブルグ、マドリード、ポルト、レイキャビク、ストックホルム、シュツットガルトの10都市で路線バスに燃料電池バスを導入することを目標にしています。CUTE(Clean Urban Transport of Europe)プロジェクトと平行して進められ、ヨーロッパ最大の水素プロジェクトと位置づけられている。運行ルートの決まった、公共交通のための燃料インフラ整備からスタートし、徐々に水素補給拠点を増やしていく水素インフラの普及戦略です。
EU諸国では、従来からの自然エネルギーへの取り組みが活発であったので、自然エネルギーによる水素製造を前提に検討が進められています。水素の製造を、自然エネルギーによる水の電気分解50%、天然ガス由来40%、石油由来10%と想定しているそうです。

米国では、1993年 エネルギー省、環境保護局など七つの国家機関とダイムラーベンツ社、フォード社、GM社といった自動車メーカーが共同し、次世代車開発プロジェクト(PNGV : Partnership for a Next Generation Vehicle)を開始。ガソリン改質で34キロメートル/リットルの燃費を目標に。2002年には脱石油を明確に打ち出したフリーダム・カー・プロジェクトを発表。2003年の施政方針演説では今後5年間で17億ドルの予算を投入。まず石油エネルギーから天然ガス等の代替燃料に移行を図り、天然ガスパイプラインなどインフラ整備を行った後、それらのインフラを利用した水素供給を行う。

一方日本では、「水素・燃料電池実証プロジェクト JHFC:Japan Hydrogen & Fuel Cell Demonstration Project」によって計9ヵ所の水素ステーションを首都圏に建設、2003年8月から東京駅八重洲口~東京テレポート駅間と門前仲町~東京テレポート駅間で燃料電池バスの運行が開始されています。

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FCHV-BUS2 トヨタと日野自動車共同開発の燃料電池ハイブリッドバス

ただし、水素ステーションの水素製造方法は、脱硫ガソリン改質、ナフサ改質、LPG改質、液体水素貯蔵、メタノール改質、高圧水素貯蔵、アルカリ水電解、灯油改質、都市ガス改質とバラバラで、インフラ整備に向けた戦略が絞り込めていないのも事実のようです

EUは自然エネルギーを利用した水素製造&都市の公共交通網を通じた水素インフラの設置、米国は天然ガスパイプラインを想定と、普及のためのアプローチは異なるものの、水素エコノミーの実現に向けて、インフラ整備の戦略がしっかりと見えてきています。
日本では公共投資というと、道路公団問題や新幹線整備にまつわる政治問題など、とかく最近はネガティブなイメージが付きまといますが、既得権益としての土建工事だけでなく、次世代インフラとしての水素流通を含めた、将来的なビジョンの提示を期待したいところです。

■関連サイト
- 燃料電池バスついに運行開始!(東京都)
- 水素・燃料電池実証プロジェクトJHFC
- EU 燃料電池バスがブリュッセルを試験走行
- DaimlerChrysler Delivers the First Fuel Cell Bus to the City of Madrid(プレスリリース)
- Fuel Cell Bus Club
- CUTECUTE(Clean Urban Transport of Europe)
- ECTOS(Ecological City Transport System)