家庭での燃料電池利用

燃料電池ビジネスの本命”住宅市場”を狙え!」から、家庭での燃料電池の利用についてまとめてみます。
家庭で燃料電池を設置する場合は、1Kwクラスのコージェネレーション(電力と熱を同時に供給する)定置型燃料電池が、当初は主になるようです。燃料電池用の水素は、すでに家庭で利用可能な、都市ガス、天然ガスやLPGから取り出して利用します。PEFC型(高分子固体電解質型)と呼ばれる方式が有力視されています。
すでに天然ガスは約2000万世帯、LPGは約2700万世帯にインフラとして整備されている。また0度C~100度Cという常温に近い温度で作動し、設置面積もコンパクトで振動、騒音も発生しない。廃熱を利用することで総合エネルギー効率70%以上を達成できるのが特徴です。

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一方でエアコン、照明、冷蔵庫、洗濯機などの常にコンセントにつながっている”ライン型”の電化製品には定置型燃料電池から電気を供給することができる。家庭用の定置型燃料電池は、電気と同時に熱を供給するコージェネレーションによって、高い総合エネルギー効率を発揮する。現状での家庭の熱と電力の需要は、5対4で電力の需要比率が多い。一方で燃料電池では発熱の方が5対4で多い。現状では熱供給の比率と、需要の間でミスマッチが出てしまうが、家電製品のさらなる省エネ化と、燃料電池の発電効率の向上で、この需給ミスマッチは解消する余地は大きくある。 オール電化住宅の例もあるように、電力は熱として使うこともできるので、なるべく熱を消費して電力があまるように工夫をしていく必要がある。燃料電池からインバーター(直流を交流に変換する機器)を通さずに、直流で家電機器に供給できると効率は10%程度改善できる。現状ではコンセントの100V交流にあわせているが、家電製品では一度直流に直して利用しているものも多いので、こういった電力を使用する機器側での改良の余地はある。

コージェネレーションでは熱と電力をバランスよく消費することが、効率改善につながります。ただし現段階では「家庭に自由に使える熱がない」状況なので、逆にコージェネレーションが普及してきた段階で、熱を利用した新しい製品も生まれてくるのかもしれません。例えば乾燥機、生ゴミ処理機など、熱というエネルギーが、電気のコンセントのように家庭内で使いやすい形で利用できれば、色々と可能性もあるのかもしれません。

また燃料電池は小さな”発電所”ともいえますが、既存の大規模な発電所が「少数受注生産」の製品だったのに対し、「規格・大量生産」の製品に変わることのメリットも大きいと考えられます。これまでの内燃機関を使った発電所ではスケールメリットを追求するために、大規模な施設となっていました。一方で、化学反応によって発電する燃料電池は、規模を大きくすることでのメリットはあまりありません。また規格大量生産になることで、コストダウンとイノベーションによる、様々な企業の競争が期待できます。

戸建住宅、マンション、オフィスなど、燃料電池を設置する建物には色々な規模があります。当然、規模によって消費する電力も異なるのですが、分散システムとして燃料電池を考えると、それぞれに異なる出力の定置型燃料電池を設置するよりは、単一の燃料電池を複数ネットワーク化して利用するほうが効率がよい可能性もあります。
出力数キロワットの規格化、大量生産された燃料電池を、必要な電力を供給できるように、複数台をつなげて建物内に設置する形式です。規格・大量生産によって、個々の燃料電池の信頼性が向上するのに加えて、複数の燃料電池をネットワーク化することで、一つが故障しても相互に補完することで停電を防ぐことが可能となります。一つの大規模な火力発電所の年間の停止率を0.001%にする努力よりも、停止率1%の燃料電池を10台ネットワーク化するほうが、より信頼性も高く、コストも低くなるのは明らかです。
また燃料電池は騒音や排気の問題も無いので、ビルの各フロア、マンションの各部屋などの小さいスペースに設置することができる。小規模な機器を、分散しながら設置しつつ、ネットワーク化することでスケーラビリティーの高いエネルギーシステムとして利用することが可能となります。小型、軽量化が進めば、エアコンのように各部屋に設置されて、熱と電力を最大限に効率よく利用できるようになるのかもしれません。

また分散システムという面では、自宅に駐車している燃料電池自動車を家庭のエネルギー・ネットワークに接続して、家庭の電力需要ピーク時をカバーするというアイデアも提示されています。
家庭の電力消費は、朝起きてから出かける前、帰ってきてから寝るまでがピークとなり最大で約3キロワット程度になるが、それ以外の時間では500ワット未満しか使われない。家庭用の定置型燃料電池で開発が進められているものは出力1キロワットが中心。一方で自動車用の燃料電池の容量は50~100キロワットが想定されるので、家庭の足りない分は家庭の駐車場に接続した自家用車から供給を受けることも考えられる。
現在、国内の自動車普及台数は約7000万台で、仮に1%の自動車がピーク時間に電力を供給したとしても、発電能力は3500~7000万キロワットにもなり、東京電力の夏場のピーク需要を上回る規模となる。電力インフラの最適化が進み、時間帯によって電力の値段が大きく変わる状況になれば、ユーザーのピーク時のコスト対応という意味で、あながち非現実的な考え方でもないようです。

現状では、まだまだ燃料電池のコストも高く、技術的な課題も多いようですが、熱と電力を組み合わせて扱い、省スペース、長寿命を実現するためには、日本の総合家電メーカーの持つノウハウが大きな競争力があるようです。アメリカの燃料電池ベンチャーが日本のメーカーと提携を結び、共同開発を進める理由には、製品化するための日本メーカーの総合力があげられるようです。Ballard社と荏原バラード社、United Technologies社傘下のUTCFC社と東芝(東芝IFC)、PlugPower社とクボタ・丸紅、などがその例です。日本勢では松下電器、三洋電機がリードし、トヨタ自動車、三菱電機が続く形のようです。

住宅向けに設置する際には9万時間の連続運転が要求されます。耐久性に関しては、燃料電池のセルの劣化、天然ガス改質による耐久性の劣化、インバーターの耐久性などが課題となるそう。
PEFCは固体の電解質を利用しているため、理論的にはメンテナンスフリーにすることも可能。インターネットなどによって、家庭の燃料電池の運転状況を遠隔モニタリングし、安全確認と制御を行うようなサービスを提供することも可能かもしれません。
天然ガスを改質する方法は、既存のインフラを活用できる点でメリットが大きいが、一方で改質装置によるデメリットもある。一つは燃料電池が発電するまでの起動時間で、現状では40分程度かかってしまうが、この原因は改質装置にあります。直接、水素を供給して発電する場合には数分で起動できる。改質装置には、天然ガスの硫黄分を除去する触媒など、定期的にメンテナンスが必要な部品もあり、耐久性、コスト面からも直接水素を供給できることが理想ではあるようです。

太陽電池を設置する家庭も増えており、多様なエネルギー源をうまく組み合わせて、家庭内での需要と供給のバランスを最適にコントロールする必要もありそうです。究極的には、晴れた日の太陽電池の発電から水素を生成、ピーク時の家庭用燃料電池が利用したり、余剰電力を地域の水素ガスステーションに提供するなどのエネルギー利用サイクルが実現することも想定できるのかもしれません。

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井熊 均 (著)

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■ 関連サイト

荏原バラード、家庭用1kW級燃料電池コージェネシステムの準商用機を開発(BizTech)

荏原バラードは28日、2003年7月に締結した大阪ガスとの共同開発契約に基づき、大阪ガスの技術に基づく燃料改質装置と排熱利用ユニットを組み合わせた家庭用1kW級固体高分子形燃料電池(PEFC)コージェネレーションシステムの準商用機-2型の開発を完了したことを発表した。既にフィールドテスト用として大阪ガスに出荷済みという。

家庭用燃料電池の新しいライバル(BizTech)

 大阪ガスは、「ガスエンジンと燃料電池は、同じ家庭用コージェネシステムの発電機として、住み分けられる」と見ている。ガスエンジンの発電効率は約20%がやっとなのに対し、燃料電池は現時点の試作機でも、天然ガスから水素を取り出す効率を差し引いても約30%を達成している。
「電気と熱を合わせた総合エネルギー効率ではどちらも約80%だが、電気を多めに使う家庭には燃料電池コージェネが向いている。加えて、集合住宅など静粛性が求められる設置場所には、燃料電池コージェネが圧倒的に有利」(大阪ガス)としている。
 ただ、ガス会社の本音は、電力会社による「オール電化住宅」攻勢に対抗できる“最終兵器”としての「ガスを燃料にした発電機の普及」にあるのは明らか。それがガスエンジンであるか、燃料電池であるかはさほど重要な問題ではないとも言える。

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