Amazonをプラットフォームにしたeコマースの技術革新から、取り残される日本市場

AmazonのWEBサービスを利用して、独自のビジネスを展開している開発者と、色々と話す機会がありました。日本のアマゾンだけを使っているとあまり気づかなかったのですが、USでは、マーケットプレイスが非常におおきなビジネス機会になっているようです。
Amazon.comでは、WEBサービス(ECS)+ マーケットプレイスというインフラのうえで、かなり新しいビジネス、Eコマースの市場が形成されているのですが、実は日本ではこの変革がまったくおきていません。その理由をちょっと考えてみました。

実は地味ながら先週にWEB Service APIの新機能のリリースがされています。API(ECS)経由で、過去三年の商品の価格変動を取得できるHistorical Pricing Serviceです。
今までECSは、すべて無料で開発者に提供されてきましたが、このサービスは2万リクエストで500ドルと有料になっています。

Amazon Web Services Blog: Amazon Historical Pricing Service Released

日本では再販制度によって、書籍や音楽CDなどが価格統制されているため、過去の価格変動を取得してもあまり意味がありません。
一方USでは、自由に価格を設定することができます。Amazon.com上でも、Sellerと呼ばれる販売業者が、新品を様々な値段で販売しています。例えばRuby on Rails解説本のようなマニアックな書籍でも、これだけのSellerが販売しています。

Amazon.com: Used and New: Agile Web Development with Rails (The Facets of Ruby Series)

Sellerは一社づつが、Amazonとは独立した企業であり、Amazonをプラットフォームにビジネスを展開しています。Sellerの中には、実際に店舗をもっていたり、安く買い付けた書籍の在庫だけを管理していたり、あるいはまったく在庫を持っていない業者など、様々なタイプがあるようです。
そのようなSellerは、Amazomのマーケットプレイス上で、何千種類もの商品を値付け・販売しています。膨大な商品を管理するために、専用ソフトを利用することが多いそうで、Monsoonは中でも最もポピュラーなソフトとのこと。

Monsoon: Sales management software for marketplace sellers...

マーケットプレイスで、できるだけ高く商品を売ることができるように、様々なルールを設定、協業他社の状況にあわせて自動的に価格を変更する機能を持っています。
このような市場が立ち上がっていると、Amazom.comでリリースされた、過去の価格変動をチェックできるHistorical Pricing Serviceも、有料でも使いたいというユーザーが存在するのでしょう。

一方の日本では、再販制度で価格が統制されているため、このようなマーケットプレイスでの活発なビジネス、技術革新は必要とされません。新古品でもなんでも、一度でもユーズド扱いになれば、ブックオフなどで自由な値段付けがされているのに、新品は一切、値段を変更してはいけない。
そして価格統制の見返りにもたらされる「返品」という仕組みで、公称販売部数と実売部数が乖離していき、広告市場としても非常にグレーな領域が広がっている。

再販制度で文化保護云々という怪しげな議論にはここでは立ち入りませんが、日本のeコマース関連の技術革新は、この制度によってある程度、阻害されていることは確かだと思います。販売競争が無いところに工夫の余地は生まれず、またWEBサービスを利用した関連ツールなどの利用も必要性がないのです。

Amazonは、単なるネット技術だけではなく、在庫管理や物流オペレーションなど、リアルな領域へも多大なIT投資を行っていることで知られています。この点がGoogleなどとは大きく異なる点です。WEBサービスを提供した効果としても、Googleよりかなり裾野の広い市場を生んでいるように見えます。
Amazonでは物流センターの効率化に、トヨタのカンバン方式を参考にしたとか、しないとか。カイゼンによる品質向上、効率化は日本の競争優位の源泉でもあり、トヨタが最高益を更新し続けているのも、過去のカイゼン技術革新の積み上げに他ならないでしょう。

一方、コンテンツ産業では、再販制度に加え、音楽CDの輸入権やiPod課金、デジタルTVのコピーワンス問題や、広くは放送権の既得権益化など、とにかく価格統制と既存企業の保護を最重視した政策が目白押しです。
書籍全文検索にも、様々な圧力がかかっているようですが、「情報を入手するための手段は、誰かによってコントロールされるべきなのか?」という点に加えて、「未来の産業の技術革新を阻害していないか?」という側面は、日本のIT産業にとって非常に重要な問題のような気がします。

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