5年後の家族の食卓を考える

半年ほど、集中的に取り組んできたCOOKPADの英語サイトを、無事に今月公開することができたので、ちょっと立ち止まって、少し先のことを考えてみたい。食ということに関わり初めて1年と3ヶ月、頭のなかにあるいくつかのイメージを、「5年後の家族の食卓」というかたちにまとめてみる。

家族全員で食卓を囲む時間を増やしたい、というテーマは、そもそも今の仕事を選ぶきっかけでもあった。郊外に住み、東京の会社に通勤していると、平日の夜に家族と食事をすることは、とても難しい。という問題意識から始まったのだけれど、実はこれは日本の大都市固有の問題だということに気づいた。大都市圏に住んでいなければ、事情は異なるし、海外では、例えばサンフランシスコのスタートアップ時代の同僚も、「6時に退社→家族と食事→自宅で仕事」というのは、割と普通のライフスタイルだった。これは働き方の問題なので、食という観点からはちょっと保留。

では、家族の食卓、そのものがどう変わってほしいのか? 5年後の家族の食卓では、目の前の料理についての会話が、もっと盛り上がるようになっていてほしい。料理をした人が、食材やレシピのストーリーを、家族に伝えたり、食べた人がおいしさや感謝を、もっと表現できるとよい。

家族全員がTVを見ながら黙って食事をするのが、一番、味気ない。TVで芸能人が食べ歩きをして「ま〜おいしい!」と言う番組を見ながら、目の前の食事を無関心に食べる光景は、世界から無くしたい。

食卓に並ぶ料理についての会話を盛り上げるためには、もっと話題が必要だ。レシピの生い立ち、食材は誰が、どのようにつくったのか、家族の健康のために、どんな栄養や気遣いがあるのか、などなど、食卓に並ぶ料理にストーリーとしての楽しさ、面白さを追加していく。

5年後の楽しい料理、食卓を実現するために「ライフスタイルにあったレシピの交換」「多様な買い物習慣」「食品の保存技術」の3つの領域に着目したい。

「ライフスタイルにあったレシピの交換」は言い換えると、食習慣が似ている人たちをつなげる、ということかもしれない。自分や家族が大切にしたい、食への意識、価値観を共有する場をつくる。料理のレシピは、毎日の食卓を支える、便利な道具であるべきだけれども、同時に、家族を理想のライフスタイルに導くガイドにもなる。
何を、誰と、どのように食べているのかは、その人を驚くほど的確に表現している。例えば、言葉が通じない異国の人でも、日々の食卓を知ることができたら、信頼や共感が生まれるのではないだろうか。

「多様な買い物習慣」は、毎日のショッピングを、単なる価格比較から解放すること。毎週の朝市で、馴染みの農家さんから野菜を買うようになると、普通のスーパーで野菜の値段を比べながら買う体験が、いつのまにか、とても面倒に感じるようになる。品質と価格を信頼できる相手に任せることで、食材そのものに関心を向ける余裕が生まれてくる。
日本の高度に発展した宅配便だけでなく、Amazonフレッシュや、欧州で有機野菜の配送網を構築したRiverford Organic社、地域に根ざしたCSA(コミュニティー・サポーテッド・アグリカルチャー)など、世界各国で新しい商流が広がりつつある。価格だけでなく、自らの価値観で買い物の意思決定をする家族は、今後、間違いなく増えていくだろう。

「食品の保存技術」は、例えばCAS冷凍などの、より美味しく、安全に、小ロッド、低コストで食品を保存する技術の進歩と、伝統的な保存食品のリバイバルに着目したい。
例えば、料理教室を開いているセミプロ料理家が、レシピと一緒にお菓子やオリジナルの調味料を販売したり、離れた場所に住む祖母が、孫が生まれた娘の料理の下ごしらえをして送ってあげる、などの多様な食品の交換、流通が盛んになる可能性もある。
ファストファッションが世界を席巻する中で、ニューヨークで生まれた手工芸品のマーケットプレイスのetsyが、支持を広げているように、ファストフードへの反動として、伝統的な保存食品がリバイバルしたら面白そうだ。食品を保存する昔からの知恵に、現代風の食材やアレンジを加えることで、各家庭で発見した味を交換するのも楽しそう。

テーブルに並ぶ、ひとつひとつの料理に、沢山の想いやストーリーがつまっている。美味しいだけじゃなくて、伝えたくなる、聞きたくなる。家族の団らんが、食のエンターテイメントになるような、5年後の家族の食卓があったら面白い。